スウェーデン国鉄X9形電車

スウェーデン国鉄X9形電車：ピーマン電車の活躍とその後

スウェーデン国鉄（SJ）でかつて活躍したX9形電車は、急行列車用として製造された電車です。1959年から1963年にかけて、ヒルディング・カールソン社（現存せず）により、4両編成11本（計44両）が製造されました。本形式はX20形電車をベースに開発されており、その車体デザインや走行性能には多くの特徴が見られます。

車体デザイン：湘南型を思わせるスタイル

X9形電車の最大の特徴は、その車体デザインにあります。前面は大型の2枚窓が特徴的で、傾斜のついたデザインは、日本の湘南型電車を彷彿とさせます。側面にはコルゲートと呼ばれる、縦方向の溝がついた金属板が使用されています。塗装は、赤みの強いオレンジ色で、この鮮やかな色彩から、スウェーデン語で「ピーマン電車」を意味する愛称『パプリカトーグ (Paprikatåg)』で親しまれていました。この独特な外観は、当時の人々に強い印象を与えたことでしょう。

走行機器：パワフルな駆動システム

X9形電車の電装品は、アセア（現アセア・ブラウン・ボベリ）製が採用されました。主電動機は、1両あたり340kWの高出力モーターを搭載し、両先頭車が電動車であることから、4両編成全体では1,360kWもの出力を誇ります。車軸配置は1A-A1（UIC表記）で、4軸すべてが駆動輪として機能していました。この強力な駆動システムにより、急行列車としての役割を十分に果たすことができました。

編成と車両記号

X9形電車の編成は、以下の車両記号で構成されていました。

Mc：運転台付き電動車
T：付随車
TF：変圧器搭載車
PT：パンタグラフ搭載車

これらの車両が連結することで、効率的な電力供給と運行を実現していました。

運用と保存

X9形電車は主にスウェーデン南部で運用され、長年にわたり多くの乗客を輸送しました。しかし、1999年に定期運用からは引退することとなります。現在では、2編成が保存されており、そのうちの1編成は鉄道博物館で一般公開されています。これらの保存車両は、スウェーデンの鉄道史において重要な遺産として、後世に伝えられています。

まとめ

X9形電車は、その独特の車体デザイン、パワフルな走行性能、そして愛称「パプリカ電車」で知られる、スウェーデンを代表する急行電車でした。1999年の引退後も、保存車両を通じてその姿を見ることができるのは、鉄道ファンにとって大きな喜びと言えるでしょう。その鮮やかなオレンジ色の車体は、多くの人の記憶に今も鮮やかに残っていることでしょう。現在でも、スウェーデンの鉄道史を語る上で欠かすことのできない存在であり続けています。

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