スカンデルベグ

スカンデルベグ：オスマン帝国に抗ったアルバニアの英雄

15世紀、ヨーロッパの勢力図を塗り替えようとしていたオスマン帝国。その進撃を阻んだ英雄の一人が、アルバニアの民族的英雄、スカンデルベグである。本名ジェルジ・カストリオティ。トルコ語名イスケンデル・ベイに由来する「スカンデルベグ」の名で知られる彼は、アルバニアの独立のために25年間に渡りオスマン帝国と戦い抜いた。

オスマン帝国の人質から独立の旗手へ

スカンデルベグは、アルバニア中部を領有する有力貴族の子として生まれた。しかし、1423年頃、父がオスマン帝国に従属すると、兄弟と共に人質としてイスタンブールへ送られる。そこでイスラム教に改宗し、ムラト2世の宮廷で騎士として仕えた。彼は卓越した軍事才能を発揮し、東ローマ帝国やセルビア、ハンガリーとの戦いで活躍。その勇敢さから、アレクサンドロス大王になぞらえて「スカンデルベグ」の名を与えられた。

1437年頃、アルバニアに戻ったスカンデルベグは、オスマン帝国の支配下で軍司令官となる。しかし、ハンガリーのフニャディ・ヤーノシュの反オスマン運動に呼応し、1443年に遂に反旗を翻す。キリスト教に再改宗した彼は、ヴェネツィア共和国、ナポリ王国、ローマ教皇庁などの支援を得て、500人の兵と共にアルバニア北部を統一した。

25年にわたる抵抗と、その戦略

その後、スカンデルベグは、ムラト2世やメフメト2世率いるオスマン軍を1450年と1466年に撃退するなど、驚異的な戦果を挙げた。優れた戦略家でもあった彼は、ゲリラ戦を駆使し、オスマン軍を翻弄。その戦闘における勝率はほぼ100％であったと伝えられる。彼は、アルバニアの険しい地形を巧みに利用し、機動力を活かした奇襲攻撃を繰り返し、常にオスマン帝国を苦しめた。

スカンデルベグの軍は、アルバニアの様々な部族からなる多様な兵士で構成されていた。彼はこれらの部族の結束を維持し、共通の敵に対する抵抗を継続するために、宗教的な熱意だけでなく、政治的な手腕も駆使した。外交面でも、ヨーロッパ列強との同盟関係を巧みに築き上げ、経済的な支援や軍事的な援助を得た。

アルバニアへの影響

スカンデルベグは1468年に病死するが、アルバニアの独立はその後も12年間続いた。しかし、1480年にオスマン帝国に併合された。にもかかわらず、スカンデルベグは、オスマン帝国のヨーロッパ進出を遅らせた英雄として、アルバニア国民に深い敬意をもって語られる。19世紀のアルバニア民族意識の高まりと共に、彼は民族的英雄として再評価され、アルバニア独立運動と国民統合の象徴となった。現在も、アルバニアの5000レク紙幣には彼の肖像が描かれている。

スカンデルベグは、単なる軍事的な英雄を超え、アルバニアのアイデンティティと独立の象徴となった。彼の生涯は、民族的抵抗と独立への強い意志を示す物語であり、現在までアルバニアの人々に深く刻み込まれている。ハンガリーのフニャディ・ヤーノシュ、ワラキアのヴラド・ツェペシュと並んで、オスマン帝国の拡大を遅らせた重要な人物として歴史に名を残す。

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