スキ!

スキ!

1990年に東宝が製作・公開した日本映画です。主演には当時カリスマ的な人気を誇ったシンガーソングライターの大江千里と、若手アイドルの島崎和歌子が起用されました。監督は渡邊孝好、脚本は野島伸司が手がけています。同時上映作品は『山田ババアに花束を』でした。

ストーリー

物語の中心となるのは、対照的な境遇にある二人の若者です。一人は、大手建設会社・東都建設に勤めるごく平凡なサラリーマン、二宮氷介（大江千里）。彼はこれといった学歴もコネもありませんでしたが、その「犬に似た顔」が功を奏し、なんと会社の社長令嬢・小百合（藤田朋子）に見初められます。この幸運によって、氷介は小百員からいきなり副部長へと、異例とも言えるスピードで出世を果たし、公私ともに順風満帆な日々を送っていました。

一方、高校生の少女・椎名双葉（島崎和歌子）は、氷介とは真逆の人生を送っていました。コネもなく、何をやってもうまくいかない不遇な日々。そんな彼女がある日、不思議な占い師（大竹まこと）から「13日の金曜日、100番目の男」にまつわる予言を受けます。双葉が周囲の男性を数えていくと、予言された「100番目の男」が偶然にもあの二宮氷介であることが判明するのです。

この出来事をきっかけに、氷介と双葉の立場は奇妙な形で逆転していきます。幸運の絶頂にいたはずの氷介と、不遇にあえいでいた双葉。運命の糸に導かれるように出会った二人の間に、一体どのような恋が芽生え、その行方はどうなるのでしょうか。本作は、二人の不思議な関係性と、それによって引き起こされる様々な出来事を描く青春ラブストーリーです。

キャスト

二宮氷介：大江千里
椎名双葉：島崎和歌子
小百合：藤田朋子
角野卓造
大竹まこと
菅井きん
森口瑤子
大高洋夫
鈴木瑞穂
ほか

大江千里は、主演の二宮氷介役のほか、「梶原杢太郎」というペンネームで別のキャラクターとしても出演していることが知られています。

スタッフ

脚本：野島伸司
監督：渡邊孝好
音楽：羽田健太郎
製作者：増田久雄
* 製作：東宝、プルミエ・インターナショナル

脚本を手がけた野島伸司は、本作の公開後に数々の大ヒットテレビドラマを生み出し、その名を不動のものとします。

テーマ曲

本作のテーマ曲には、主演の大江千里自身が作詞・作曲を手がけた「あいたい」が使用されました。この楽曲は小室哲哉が編曲を担当しており、映画の世界観を彩る印象的なナンバーとなっています。

補足事項

本作は、前年に公開された東宝の青春映画『君は僕をスキになる』のスタッフが製作に携わっています。また、製作発表が行われた日は、主演の大江千里が30歳の誕生日を迎えた記念すべき日でした。

当時の音楽シーンで絶大な人気を誇っていた大江千里を主演に迎えた意欲作ではありましたが、東宝が年間計画で編成する正月興行のラインナップとしては異色の存在でした。通常、この時期にはシリーズものや特定のアイドルをフィーチャーした作品が中心となる中で、『スキ!』はそれらとは異なる毛色を持っており、結果的に興行成績はあまり振るわなかったとされています。ある書籍では、本作の公開時点で既に翌年の正月映画として『ゴジラvsキングギドラ』の企画が進行しており、本作はそれまでのいわば「ショートリリーフ」的な位置づけであったのではないかと推測されています。

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