スキサメトニウム

スキサメトニウムについて

スキサメトニウム（英:suxamethonium）は、筋肉の弛緩を助ける医薬品の一種で、特に全身麻酔の際に迅速な導入を必要とする場合に用いられます。この薬剤は四級アンモニウム化合物であり、医療現場では主に塩化スキサメトニウムという形で利用されています。他にもサクシニルコリンという名称でも知られています。

特徴と効果

この薬の動作メカニズムは、神経筋接合部においてアセチルコリンと同じようにニコチン受容体を刺激し、脱分極を引き起こすことです。アセチルコリンと異なり、スキサメトニウムはコリンエステラーゼによる分解が遅いため、持続的な脱分極状態を保持します。これにより、ナトリウムチャネルが不活性化され、活動電位の発生が防がれます。そのため、筋肉が弛緩した状態が保持されます。

コリンエステラーゼ阻害剤との併用によって、この薬剤の効果は延長されることがありますが、通常、コリンエステラーゼ阻害剤は非脱分極性筋弛緩薬の効果を逆転させるために使用されるため、注意が必要です。

主な用途

スキサメトニウムは、手術時の筋弛緩、気管挿管の際、あるいは骨折脱臼の整復時に使用されます。また、精神科での電気痙攣療法の際にもこの薬剤が使用されることがあります。動物医療でも使われており、特に安楽死の際に利用されることがあるため、その使用目的は多岐にわたります。

副作用と注意点

この薬剤は、特定の副作用を伴う可能性があります。強心配糖体との組み合わせで不整脈を引き起こすことがあるため、注意が必要です。また、眼圧を上昇させる作用もあり、緑内障患者には使用が禁忌とされています。さらに、悪性高熱症のリスクがあるため、近年では麻酔科での使用頻度が減少しています。

供給問題と再開

2022年末、日本薬局方の規定に従わない製造方法が発覚し、この薬剤の供給が危機に瀕しました。この問題は改善が難しく、2023年初めには供給が停止される事態となりました。しかし、臨床での必要性が高いため、関連団体が製造再開を求めた結果、原薬を用いた製造が正式に承認され、2023年5月から臨床での使用が再開される見込みです。

誤投薬事故

過去には、スキサメトニウム商品名の「サクシン」が他の薬との名称の類似性から誤投与される事故が発生し、患者が死亡する事例がありました。この事故を受け、名称が改められ、2009年以降は「スキサメトニウム」として商品名が変更されました。

フィクションにおける描写

スキサメトニウムは、映画や小説などのフィクション作品にも登場します。例えば、1995年の映画『ガメラ 大怪獣空中決戦』では、捕獲作戦に用いられるシーンがあります。また、ライトノベルや小説内でも、サクシニルコリンとして言及されることがあります。

まとめ

スキサメトニウムは、医療において広く使用されている筋弛緩薬であり、その効果と用途は多岐にわたりますが、使用には十分な注意が求められます。

もう一度検索