強心配糖体

強心配糖体について

強心配糖体は、心房細動や心房粗動などの上室性頻脈、また鬱血性心不全の治療に使われるステロイド配糖体の総称です。これらの薬物は、特定の植物や動物に含まれており、特にその中でもジギタリスがよく知られています。ジギタリスは、スコットランドのウィザーリング医師によって1785年に心不全の治療薬として使用され始め、イギリスでは民間療法としても利用されています。アフリカでは、ウアバインやカエルから得られる毒が矢毒に使用されることもあります。

構造

強心配糖体は、糖、ステロイド、ラクトンから構成されています。糖鎖には、多くの種類があり、ジギタリスに特有のジギトキソースという成分が2位と6位にヒドロキシ基を欠いて存在します。他の配糖体の中でも、ジギトキシン、ラナトシドC、デスラノシド、ジゴキシン、メチルジゴキシンといったものは特にジギタリス配糖体として区別されます。ステロイド部分には独自の立体配置があり、心機能において重要な役割を果たします。また、ラクトンにはカルデノライドとブファジエノライドという二つのタイプがあり、ブファジエノライドはヒキガエル由来の毒から得られるものです。

薬理作用と適応

強心配糖体は、心不全や上室性頻拍といった状態に有効です。特に、心筋に予備能力がある場合に効果を発揮しますが、心筋症のように心筋が疲弊している状態では効果が薄れます。また、ジギタリスは心筋の酸素需要を増加させるため、急性心筋梗塞患者に対しては使用が禁忌です。心室性の疾患（例：心室性期外収縮）や腎疾患に対しても注意が必要です。

作用メカニズム

強心配糖体には陽性変力作用と陰性変時作用があり、心筋の収縮力を強め、心拍出量を増加させるだけでなく、心拍数を減少させる効果もあります。これにより血流量が改善され、浮腫の軽減につながります。また、心拍数においては中枢神経系を介し、迷走神経を刺激することにより心拍数を下げる効果があります。強心作用の要因としては、ナトリウム・カリウムポンプを阻害し、結果的に細胞内のカルシウム濃度を上昇させることが挙げられます。これにより心筋の収縮力が高まり、心不全や上室性頻脈の治療に寄与します。

副作用と禁忌

強心配糖体はその治療域が狭く、過剰投与による副作用が多いことが特徴です。副作用としては、食欲不振や悪心、嘔吐、下痢、さらには異所性自動能の発現が見られます。特に低カリウム血症の患者は心室性不整脈のリスクが高く、これはカリウムが強心配糖体と競合するためです。

併用する薬剤にも注意が必要で、例えば利尿剤によるカリウムの減少は、結果として強心配糖体の作用を増強し、危険な不整脈を引き起こす可能性があります。

身近な強心配糖体

強心配糖体は、ユリ科やゴマノハグサ科、キョウチクトウ科、キンポウゲ科の植物に広く分布しています。特にジギタリスとストロファンツスが主に薬用として扱われており、一部の植物（例：スズラン、モロヘイヤ、キョウチクトウ）には毒性を持つ成分が含まれているため、注意が必要です。

以上のように、強心配糖体は心疾患の治療に用いられる重要な薬剤群でありながら、その使用には注意が求められます。

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