スジイルカ

スジイルカ：その生態と人間との関わり

分類と特徴

スジイルカ( Stenella coeruleoalba)は、クジラ目ハクジラ亜目マイルカ科に属するイルカの一種です。1833年にFranz Meyenによって発見され、学名は特徴的な体色の模様に由来します。体長は雄で最大2.6メートル、体重は160キログラムに達し、他の近縁種と比較して大きさや形状は類似していますが、体表の模様は独特で識別が容易です。腹部は白または薄いピンク色で、体側には青色の帯が数本入り、特に体の中央部を横切る帯は長く、尾びれに向かって湾曲するのが特徴的です。生まれたばかりの個体は体長1メートルほどですが、成熟すると雌は2.4メートル、雄は2.6メートルほどになります。寿命は55～60年で、妊娠期間は約12ヶ月、出産間隔は3～4年です。性成熟年齢は地域によって異なり、地中海では雌が12歳、太平洋では7～9歳と報告されています。

生態と行動

スジイルカは通常、数百頭規模の大きな群れで行動し、他のマイルカ科のイルカと混群することもあります。活発な種で、水面から高くジャンプしたり、ブリーチング（水面から飛び上がり、体を横にして水面に着水する行動）を行うなど、ダイナミックな行動が見られます。食性は主に小魚やイカです。

分布と生息数

スジイルカは世界中の温帯から熱帯の海域、特に北緯40度から南緯30度の間の沖合いに広く分布しています。水温10～26℃の範囲に生息しますが、18～22℃を好みます。南北大西洋（地中海やメキシコ湾を含む）、インド洋、太平洋に多数生息しており、西太平洋では回遊行動も確認されています。全生息数は200万頭を超えるといわれていますが、一部地域では生息数の減少が懸念されています。

人間との関わり

日本を含むいくつかの地域では、食用として捕獲されてきました。特に、和歌山県太地町や静岡県伊豆半島では、長年にわたってスジイルカを捕獲し、食用としてきました。伊豆半島では「スズメイルカ」として販売されることもありましたが、近年ではその数は激減しており、現在ではほとんど捕獲されていません。

地中海では、1995年にスジイルカの個体数が激減したことが報告されています。その原因は、赤潮による神経毒への曝露や、PCB類などの環境ホルモン様物質による免疫系の攪乱などが考えられていますが、明確な原因は特定されていません。

飼育に関しては、2013年時点では和歌山県太地町立くじらの博物館で1頭が飼育されているのみで、長期間の飼育は非常に困難です。

保全

スジイルカは、現在、絶滅危惧種に指定されているわけではありませんが、生息数の減少が懸念されている地域もあります。人間活動による海洋環境の変化や、直接的な捕獲の影響などが、個体数減少の要因として考えられます。今後の保全のためには、生息状況の継続的なモニタリングと、海洋環境の保全が不可欠です。

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