スズキ・アルト (8代目)

概要

2014年12月に発売された8代目アルト(HA36型)は、「原点回帰」をテーマに初代アルトのコンセプトを強く意識して開発されました。47万円という低価格で人気を博した初代モデルのように、軽量化による燃費性能の向上とシンプルなデザインを目標としています。先代モデルに存在した低燃費モデル「アルトエコ」を統合し、市販車トップとなる37.0km/L(JC08モード)の低燃費を実現しました。

2015年にはターボエンジンを搭載したホットハッチモデル「ターボRS」が追加され、その後、約15年ぶりに「ワークス」が復活しました。製造はスズキ湖西工場で行われていました。

メカニズム

パワートレイン

8代目アルトは、軽量化と高効率化を図った直列3気筒R06A型エンジンを搭載し、CVT車では市販車トップの37.0km/Lの低燃費を達成しました。マイルドハイブリッドシステムは見送られましたが、エンジン自体は熱効率の向上や外部EGRの採用により、低中速域でのトルクが向上しました。トランスミッションは、CVT、5速MTに加え、スズキの乗用車初となる5速AGSが設定されました。特に5速AGS車は、カタログ燃費と実燃費がほぼ一致するという特徴があります。

ターボモデルである「ターボRS」には専用のターボエンジンが搭載され、最大トルクが向上し、ターボラグも改善されました。「ワークス」は、さらにチューニングを施し、最大トルクを強化。トランスミッションは5速MTと5速AGSが用意され、5速MTはクロスレシオ化、5速AGSは変速制御プログラムが専用チューニングされています。

ボディ・シャシ

軽量化のため、プラットフォームは全面的に刷新され、スズキの軽自動車用プラットフォームとしては第5世代目にあたる「HEARTECT」が採用されました。リアサスペンションは、前輪駆動車ではトーションビーム式に変更され、軽量化、コスト、スペース効率、走行性能の向上を図っています。

ボディには980MPa級高張力鋼板が使用され、軽量化と剛性向上を両立。曲げ剛性やねじり剛性が大幅に向上しました。「ターボRS」では、ストラットタワーバーや高剛性フロントメンバーを採用し、さらに剛性を高めています。

タイヤサイズはグレードによって異なり、「X」「ターボRS」「ワークス」は165/55R15、その他のグレードは145/80R13が採用されています。フロントブレーキは、「ターボRS」と「ワークス」がベンチレーテッドディスクブレーキで、その他はソリッドディスクとなります。

安全装備・その他

安全装備として、レーダーブレーキサポート(衝突被害軽減ブレーキ)や誤発進抑制機能などが搭載され、一部グレードでオプション設定されました。2018年の仕様変更では、デュアルセンサーブレーキサポートや車線逸脱警報機能などが追加されました。また、ステアリング機構には可変ギアレシオステアリングが採用され、フロントドアには中間2段ストッパーが採用されました。

デザイン

8代目アルトのデザインは、男女問わず幅広い層に受け入れられるように、初代モデルのシンプルさを追求しています。ヘッドランプ周りのデザインが特徴的で、室内空間の拡大にも力が入れられ、ホイールベースが延長され、居住性が向上しています。インテリアはシンプルなデザインで、部品点数を抑えることで軽量化に貢献しています。

「ターボRS」と「ワークス」は、エクステリアとインテリアのデザインが標準車と差別化されており、専用のパーツやカラーリングが採用されています。ボディカラーは、8色が用意され、グレードによって選択できる色が異なります。2016年には、初代モデルからの国内累計販売台数500万台達成を記念した特別色も追加されました。

ラインナップ

グレード構成は、バンモデルの「VP」、乗用モデルの「F」、「L」、「S」、「X」、ターボモデルの「ターボRS」と「ワークス」の7グレードで構成されています。トランスミッションは、グレードによって5速MT、5速AGS、CVTが設定されています。

各グレードごとに装備が異なり、上級グレードほど快適装備が充実しています。ディーラーオプションでは、200mmワイドDINサイズのカーナビゲーションに対応したオーディオ交換ガーニッシュが用意されています。

年表

8代目アルトの主な出来事は以下の通りです。

2014年12月: フルモデルチェンジ。
2015年3月: 「ターボRS」を追加。
2015年12月: 「ワークス」を追加。
2016年: 「e燃費アワード」軽自動車部門で1位を獲得
2018年12月: 一部仕様変更(2型)。安全装備を強化、「ターボRS」廃止
2019年6月: 40周年記念特別仕様車「Lリミテッド」発売
2020年10月: 一部仕様変更(3型)。グレード構成を見直し、「X」を廃止。
2021年7月: バン「VP」が生産終了
* 2021年11月: 国内仕様乗用モデルが生産終了

8代目アルトは、軽量化、低燃費、シンプルなデザインを追求したモデルとして、多くのユーザーに支持されました。国内での生産は終了しましたが、そのコンセプトは後継モデルにも受け継がれています。

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