スズキ・テンプター

スズキ テンプター：英国風ビンテージをまとった誘惑者

スズキが1997年に発売したテンプター(ST400V)は、ヤマハSR400に対抗馬として登場した、クラシカルなスタイルが魅力のオートバイです。その名前に込められた「誘惑者」という意味は、洗練されたデザインと、どこか懐かしさを感じさせる走りにふさわしいと言えるでしょう。

クラシカルなデザインと現代技術の融合

テンプターのデザインは、英国製のビンテージバイクを彷彿とさせます。直線基調のフレームワークは、ノートンの「フェザーベッドフレーム」を思わせる独特のフォルム。そこに直立したシリンダーが組み合わさり、伝統的なオートバイの雰囲気を醸し出しています。ヨーロピアンスタイルを意識した車体デザインは、現代的な要素とは異なる、時代を超越した魅力を放っています。

サベージ400をベースにした高回転型エンジン

搭載されているのは、排気量396ccの空冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒エンジン。ベースとなっているのは、スズキのクルーザーモデルであるサベージ400のエンジンですが、カムプロフィールと排気側ロッカーアームを変更することで、高回転域での性能を向上させています。力強いトルクとスムーズな回転フィールを両立した、テンプターに相応しいエンジンと言えるでしょう。始動方式はセルスタートのみで、現代的な利便性も備えています。

伝統と革新が融合したブレーキシステム

ブレーキシステムもテンプターのこだわりが感じられる部分です。前後ドラムブレーキを採用していますが、フロントブレーキにはGT750でも採用されていたダブルパネルツーリーディングブレーキを採用。これは、新設計の鋳型を用いて復活させたもので、制動力の向上に貢献しています。さらに、H型リムと組み合わせたスポークホイールが、クラシカルな外観をより一層際立たせています。

短命に終わった人気モデル

1997年の発売以来、テンプターは多くのライダーを魅了しました。2000年には、ライン入りの新タイプ外装が追加され、モデルのバリエーションに幅が加えられました。しかし、人気モデルであったにも関わらず、2000年をもって生産終了。2002年末までに市場から姿を消しました。その短い販売期間も、テンプターを伝説的な存在にしていると言えるかもしれません。

「テンプター」というネーミング

「テンプター」という名前は、英語で「誘惑者」を意味します。その魅力的なデザインと走りから、このネーミングはまさにテンプターにふさわしいと言えるでしょう。興味深いことに、この名称は、スズキが1980年代前半に生産していたGR650でも使用されていました。伝統と革新が共存するスズキの歴史を垣間見れるネーミングと言えるでしょう。

テンプターの技術仕様

正式名称: ST400V
国土交通省認可型式: NK43A
原動機型式: K409
エンジン: 396cc 空冷4ストローク SOHC 4バルブ 単気筒
ブレーキ: 前後ドラムブレーキ（フロントはダブルパネルツーリーディング）
ホイール: スポークホイール

まとめ

スズキ テンプターは、伝統的なデザインと現代的な技術を融合させた、稀有なオートバイでした。短い販売期間ではありましたが、その独特のスタイルと魅力的な走りは、多くのライダーの心に深く刻まれています。現代においても、そのクラシカルなスタイルは根強い人気を誇っており、中古市場でも高い人気を誇る一台となっています。テンプターは、まさに「誘惑者」の名にふさわしい、忘れがたいオートバイと言えるでしょう。

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