スズキ・GS250FW

スズキ GS250FW：世界初の250cc水冷4気筒エンジンの挑戦と栄光

スズキが1983年から1985年にかけて製造販売したGS250FWは、軽二輪オートバイ市場に革命を起こすべく登場したモデルです。当時、軽二輪は主に単気筒または二気筒エンジンが主流でしたが、GS250FWは世界で初めて250cc水冷直列4気筒4ストロークエンジンを搭載するという、画期的な挑戦を行いました。この革新的なエンジンは、上位クラスの1000ccエンジンの排気量を4分の1にしたことから「クォーター・マルチ」という新しいジャンルを確立することとなります。

開発背景とライバル車

GS250FWの開発は、当時のライバル車種に対抗するために行われました。ホンダVT250F（V型2気筒）やヤマハRZ250（2ストローク2気筒）といった人気車種は、既に250ccクラスで最高出力35PSを誇っており、スズキはこれに対抗できる独自のモデルを必要としていました。そこで、4気筒エンジンという、当時としては異例と言える選択がなされたのです。

エンジンとシャーシ

GS250FWの心臓部である250cc水冷直列4気筒エンジンは、最高出力36PS（後期型は38PS）を発生しました。これは当時の4ストローク250ccクラスで最高出力であり、価格も47万9千円と国産250ccクラスで最高価格帯に位置づけられていました。エンジン特性は、低速トルクはやや薄く、高回転型であるものの、10,000回転を超えてもストレスなくスムーズに回る点が特徴でした。特徴的な「4-2-1-2」エキゾーストパイプとメガホンマフラーは、独特で美しいサウンドを奏で、モデル末期にはその魅力が広告でも強調されました。

車体には角型パイプ鉄フレームを採用。フロントブレーキには対抗ピストンキャリパーを備えたシングルディスク、フロントフォークにはANDF（アンチ・ノーズ・ダイブ・フォーク）を採用するなど、先進技術が惜しみなく投入されていました。リヤサスはスズキ独自のフル・フローター・サスペンション、ホイールはフロントに16インチを採用し、タイヤは前後チューブレス仕様でした。メーターはタコメーター、速度計、水温計、燃料計の4連メーターが特徴的でした。

走り、取り回し、そしてデザイン

GS250FWは、ライバル車と比較して車体が大きく重く、取り回しが難しいという欠点がありました。ホンダVT250Fのような低速域からパワフルな加速を期待すると、やや物足りなさを感じるかもしれません。また、158kgという車重も、取り回しの悪さに拍車をかけました。しかし、その反面、長距離ツーリングでの快適性は高く評価されていました。レーシーなセパレートハンドルを採用しながらも、前傾姿勢はきつくなく、比較的楽なライディングポジションが確保されていました。燃費は街乗りでリッター18km程度、ツーリングでリッター20km程度でした。

車体デザインは、当時の250ccクラスとしては大柄で、400ccクラスと比較しても遜色ないサイズ感でした。後継モデルであるGF250、バンディット250、GSX250Sコブラなどは車体が小型化されていますが、GS250FWは250ccながら400cc並みの車格を誇っていました。

市場での評価とその後

発売当初は一定の人気を得たものの、後発のヤマハFZ250フェーザーやホンダCBR250FOURが登場すると、その存在感は徐々に薄れていきました。車体の大きさや重さ、取り回しの難しさといった点が、市場での成功を阻む要因となったと言えるでしょう。1985年には後継モデルのGF250にバトンタッチし、販売を終了しました。しかし、世界初の250cc水冷直列4気筒エンジンを搭載したという歴史的意義は、今もなお高く評価されています。GS250FWは、成功とは言い難い面もありましたが、オートバイ史に大きな足跡を残したモデルと言えるでしょう。

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