スタイレット

スタイレット（Stylet）

スタイレットは気管挿管の際に不可欠な補助具で、気管チューブの内部に挿入して形状を安定化させ、スムーズな挿管を実現します。挿管が完了した後は、気管チューブからスタイレットを取り出します。この器具は、患者の状態に応じて気管チューブの形を調整し、挿管のリスクを低減します。

構造

スタイレットは通常、芯部にアルミニウムなどの柔軟な金属を使用し、外側はポリ塩化ビニルで覆われています。この構造により、使用者はスタイレットの形状を適宜変えることが可能で、気管内への挿入を容易に行うことができます。スタイレットを使うことで、特に喉頭の展開が難しい状況下でも挿管が可能になります。

使用方法

気管挿管の詳細な手法については関連文献を参照することが推奨されます。重要なのは、スタイレットの先端がチューブの先端を先に出ないようにすることです。万が一、スタイレットの先端が気管内で外れてしまうと、気管損傷のリスクが高まります。そのため、挿入中はスタイレットの先端をチューブ内に留めることが原則です。

スタイレットは一般的に使い捨てのものが多いですが、中には再利用可能なものも存在します。また、金属疲労を避けるためにも、ディスポーザブルが選ばれることが多いでしょう。スタイレットにはさまざまなタイプがあり、特に病院の実践で使われる「グライドスコープTM ビデオ喉頭鏡」に適合したものや、特殊な設計の「ベラソンTM スタイレット」もあります。

ガムエラスティックブジー

ガムエラスティックブジーは、挿管が困難なケースに対して使用される特殊なスタイレットです。この器具は長さ60 cm（約24インチ）、直径15フレンチ（約5mm）の柔軟な形状をしており、先端はホッケースティック状に曲がっています。伝統的なスタイレットとは異なり、ガムエラスティックブジーは気管内に直接挿入され、気管チューブを導くためのガイドとして使われます。これはセルディンガー法に類似した手法であり、比較的低侵襲である理由から多くの現場で利用されています。

チューブエクスチェンジャー

チューブエクスチェンジャーは、気管チューブの抜去や交換を行うための中空カテーテルです。この器具は56cmから81cmの長さがあり、喉頭を展開せずにチューブの交換を可能にします。特に、ダブルルーメン気管支チューブと通常の気管チューブとを入れ替える際に便利です。例えば、「クック気道交換カテーテル（CAEC）」などがこのタイプで、酸素送気用のルーメンが設けられています。

光源つきスタイレット

ライト付きスタイレット、またはライトワンドは、挿管時に役立つ装置であり、透過照明の原理を利用しています。スタイレットの先端から出る光が気管を透過し、暗い部屋でも挿管が成功したかどうかを視認できる仕組みです。従来の喉頭鏡とは異なり、声帯を直接観察することなく確認ができます。このような独自の機能により、日本で人気を博したトラキライトTMなどがありましたが、2023年現在では入手が難しい状況となっています。

まとめ

スタイレットは気管挿管において非常に重要な役割を果たし、多くのタイプが存在します。それぞれが特定の目的に応じた機能を持っており、医療現場での挿管技術の向上に寄与しています。入手可能な器具を適切に活用することで、挿管の成功率を高めることが期待されます。

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