スタークルーザー

『スタークルーザー』（Star Cruiser）は、1988年5月にアルシスソフトウェアからPC-8801mkIISR以降向けにリリースされた3Dアクションアドベンチャーゲームです。宇宙を舞台にしたスペースオペラ的な世界観を持ち、全編が立体的なグラフィックで表現されています。

本作は発売後、X1turboやPC-9801VM/UV（1988年）、X68000（1989年）へと移植され、1990年にはメサイヤよりメガドライブ版が登場しました。後年にはWindows環境でプレイできるよう、プロジェクトEGGを通じてPC-8801版（2008年）、X68000版（2011年）、メガドライブ版（2021年）が配信されています。

ゲームシステムの特徴として、広大な宇宙空間を自由に探索できる点が挙げられます。従来の同ジャンルゲームとは異なり、マス目状ではなく滑らかな移動が可能です。惑星への着陸には特定のデータ「ビーコン」が必要となります。戦闘システムはバージョンによって異なり、PC版『1』の迷宮戦では敵との接触後に専用のバトルフィールドへ移行する形式でしたが、メガドライブ版および続編『スタークルーザー2』では、3Dフィールド内でシームレスに銃撃戦が展開されます。

初期のPC版には、宇宙空間での敵の不自然な挙動や、回転操作の難しさに起因する敵追跡の困難さといった操作性の課題が見られましたが、続編『2』ではこれらの点が改善されました。開発途中で導入されたコマンド戦闘も、こうした操作系の問題を補う目的があったとされます。

世界観は、人類が宇宙に進出した時代を基盤としたスペースオペラです。ブラックホール、モノポール、複数のワープ航法といった、1980年代中盤当時の先端的な宇宙論や物理学の予想、SF用語が随所に盛り込まれており、コンピュータゲームでありながら硬派なサイエンスフィクションとしての側面を強く打ち出しています。物語は常に主人公ブライアンの視点から描かれ、プレイヤーが神の視点を持つことはありません。また、主人公の内面描写や感情の吐露を排しており、感傷的な表現を避けたハードボイルドな作風も本作の大きな特徴です。

主要な登場人物としては、クールな主人公ブライアン・ライト、彼の親友である根回し上手なダニエル・ギブスン、主人公を気遣うヒロイン的存在のダイアナ・ガーディス、スタークルーザー開発に関わった科学者ヒダリ・ダイゴ（MD版ではサカイ・ダイゴ）らがいます。敵対勢力VOIDの指導者ガイスト・ニードマン（PC版ではVOID-MAX）は、エイリアンでありながら人類排斥を企む黒幕として登場します。また、人類を滅亡させる生物兵器としての側面を持つ麻薬NUKEも、物語における重要な要素です。

移植版の中でも、メガドライブ版は家庭用ゲーム機としては唯一の移植であり、特に注目されます。主にX68000版を基盤としつつも、ハードウェアの制約からポリゴン表現は荒くなっていますが、メガドライブ初のポリゴンシューティングとして、その描画実現自体が技術的な挑戦でした。コンポジット出力時の色の滲みを利用して中間色を表現するなど、メガドライブの特性を活かした工夫も凝らされています。X68000版との間には、主人公が無口になりロボットのフレディが代わりに喋る点、主人公の顔グラフィックがない点、金銭概念がなくシールドや燃料が常に無料で補給できる点など、多くの変更点があります。MD版の移植が長らく行われなかった背景には、開発元の解散による著作権の複雑な散逸が示唆されていますが、近年プロジェクトEGGやメガドライブ ミニ2への収録が実現しました。

当時のゲーム誌での評価を見ると、メガドライブ版は『ファミコン通信』のクロスレビューで24/40点、『メガドライブFAN』の読者投票で23.14/30点を得ています。ストーリー展開や3D戦闘の迫力が肯定的に評価された一方、後年の書籍『メガドライブ大全』では、金銭概念の廃止などシステム的な変更点についてPC版ユーザーからの厳しい評価があったことに触れつつ、硬派な世界観や無口な主人公を「スペースオペラ」と「男のロマン」として肯定的に総括しています。

本作は、1993年にはPC9801シリーズとFM-TOWNS向けに続編『スタークルーザー2』が発売されており、その影響力は続編にも及んでいます。技術的な先進性と独特のSF世界観、ハードボイルドな語り口が一体となった『スタークルーザー』は、当時の国産PCゲームシーンにおいて異彩を放つ作品と言えるでしょう。

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