スチビン

スチビン：不安定で危険なアンチモンの水素化物

スチビンは、化学式SbH₃で表されるアンチモンの水素化物です。分子量は124.78で、IUPAC系統名ではスチバンとも呼ばれます。ニンニクに似た臭気を有する無色の気体であり、水には溶けにくいものの、エタノールには可溶性です。

物理的・化学的性質

スチビンの沸点は-18℃、融点は-88℃、比重は2.26 g/mL(-25℃)です。室温でも徐々に分解し始め、200℃では急速に分解して、金属アンチモンと水素を生じます。この分解反応は自己触媒的に進行し、爆発的な反応を起こす可能性があるため、取り扱いには細心の注意が必要です。

空気や[酸素]]と容易に反応し、酸化されます。また、塩素、濃硝酸、オゾンとも激しく反応することが知られています。化学的性質はアルシン]と類似しており、典型的な分子量の大きい[[水素化物として知られています。アルシンやテルル化水素、水素化スズなど、他の同族の水素化物と同様に不安定な性質を示します。

スチビンは塩基性を示しませんが、[脱プロトン化]]によってアニオンを形成することも可能です。例えば、ナトリウムアミド(NaNH₂)との反応によってナトリウムスチビン(NaSbH₂)と[[アンモニア]が生成します。

合成方法

スチビンの合成法はいくつか知られており、一般的にはSb³⁺と[化学]]量論的な量のH⁻との反応によって合成されます。具体的には、三酸化アンチモン]と[水素化アルミニウムリチウム(LiAlH₄)の反応、または三塩化アンチモン]と[[水素化ホウ素ナトリウム(NaBH₄)の反応によって合成できます。

また、アンチモンを含む化合物、例えばアンチモン化ナトリウム(Na₃Sb)と水の反応によっても生成します。この反応は、プロトン性の試薬とSb³⁻が反応することでスチビンが生成する例として示唆的です。

危険性と取り扱い

スチビンは人体に対して非常に強い毒性を示します。少量でも溶血作用を示し、肝臓、腎臓、神経系、呼吸器に深刻な障害を引き起こす可能性があります。さらに、空気との接触による酸化や分解反応によって火災や爆発の危険性があるため、取り扱いには厳重な注意が必要です。

特に、アンチモンが添加された鉛蓄電池では、充電時に微量のスチビンが発生することが知られています。そのため、鉛蓄電池を大量に扱う施設では、換気設備の整備と安全管理が不可欠です。

用途

スチビンの主な用途は、半導体材料の製造です。その高い反応性や特殊な性質が、特定の用途において利用されています。

有機スチビン

有機化学においては、水素化アンチモンを親化合物とする誘導体を有機スチビンと呼びます。一般式はRR₁R₂Sb（Rは水素原子または有機基）で表されます。これらの有機スチビンは、様々な有機金属化合物や材料科学の分野で研究されています。

まとめ

スチビンは、その高い反応性と毒性から取り扱いに注意が必要な化合物です。一方で、半導体材料などの製造において重要な役割を果たしていることから、その性質を理解し、安全に利用するための技術開発が重要になります。

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