スティエパン (ボスニア公)

スティエパンは、11世紀後半（1084年 - 1095年頃）に史料に登場するボスニアのクネズ（公）です。ドゥクリャ司祭年代記にその名が記されており、ドゥクリャ王コンスタンティン・ボディンによって、1083/4年頃に任命されたとされています。彼は、歴史上名前が確認できる最初のボスニアの君主であると考えられています。

当時、ボスニアはドゥクリャ王国の影響下にありましたが、完全な統合には至らず、独自の貴族と国制を維持していました。ボディンは、スティエパンをボスニアに、また別の親族であるヴカンをラシュカに任じ、間接的な支配体制を敷いていました。これらの地域は、ドゥクリャ王家を君主として戴きつつも、それぞれの独立性を保っていたと考えられます。

1605年のラグサ年代記によれば、スティエパンはボディン王に従い、1094年から1095年のラグサ包囲戦に参加したとされています。これは、スティエパンがボディン王の忠実な臣下であったことを示すエピソードと言えるでしょう。

ボディンの死後、ドゥクリャ王国の勢力が衰えると、傘下の公国群は独立の動きを強めます。特に、セルビアのヴカンが大公として勢力を拡大しました。ドゥクリャ司祭年代記によると、ボディンの後継者争いの中で、コチャパルという人物がヴカンの支援を得てドゥクリャを支配しようとしましたが、ヴカンに脅かされ、最終的にボスニアへ逃れました。コチャパルは、1100年から1101年頃に「ボスニアのバン」の娘と結婚しますが、その後ザフムリェとの戦いで命を落とします。この「ボスニアのバン」こそが、スティエパンである可能性が高いと考えられています。

年代記作者LuccariやOrbiniによれば、スティエパンの死後、息子のヴクミル（またはヴティミル）が跡を継いだとされています。スティエパンが実際に支配した領域は定かではありませんが、当時の「ボスニア」という地域は、現在のサラエヴォやヴィソコを含む、ボスナ川上流・中流域を指していたと考えられています。

このように、スティエパンは、ボスニアという地域が歴史の表舞台に登場する黎明期に、その地を統治した重要な人物の一人であると言えるでしょう。彼の治世は、ボスニアの政治的・社会的な基盤を築く上で、大きな役割を果たしたと考えられます。

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