スティル (ジョイ・ディヴィジョンのアルバム)

ジョイ・ディヴィジョンのコンピレーションアルバム『スティル』(Still)は、1981年10月8日にリリースされた2枚組LPとして、まず世に出ました。

このアルバムは、それまで未発表だった音源と、バーミンガム大学でのライブ音源で構成されています。イアン・カーティスの死後、残されたメンバーはバンド名をニュー・オーダーに変更して活動を継続することを決め、その過渡期、そしてバンドの足跡を刻む重要な作品と言えるでしょう。

『スティル』の制作には、ニュー・オーダーのファーストアルバム『ムーブメント』のレコーディングと並行して取り組んだという経緯があります。プロデューサーは両作品ともマーティン・ハネットが担当しており、その手腕が遺作となった本作に息づいています。当初は1981年8月の発売予定でしたが、実際には2ヶ月遅れてのリリースとなりました。

このアルバムには、後にニュー・オーダーのデビューシングルとなる「Ceremony」のライブバージョンが収録されているなど、ジョイ・ディヴィジョンの音楽的進化を垣間見れる興味深い内容となっています。また、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの名曲「Sister Ray」のカバーも収録されており、ジョイ・ディヴィジョンの幅広い音楽性を示す、貴重な一曲となっています。

2007年には、1980年2月20日に行われたHigh Wycombe Town Hallでのライブ音源を追加した2枚組CDが発売され、より多くのファンに彼らの音楽が届けられました。このライブ音源は、バンドの生々しいエネルギーと、イアン・カーティスのカリスマ性を余すことなく伝える、貴重な記録と言えるでしょう。

『スティル』は、未発表音源とライブ音源という構成により、スタジオ録音とは異なる、バンドの生の息遣いを感じ取れる作品です。楽曲一つ一つに、イアン・カーティスの独特の世界観と、メンバーの演奏技術の高さが表れており、彼らが作り上げた音楽の真髄に触れることができるでしょう。

収録曲は多岐に渡り、アルバム未収録の楽曲や、ライブならではの熱気あふれる演奏が収録されています。特に、ライブ音源は、観客の反応や、メンバーのアドリブなども含め、スタジオ録音とはまた違った魅力があります。

『スティル』は、ジョイ・ディヴィジョンを知る上で欠かせない作品であり、彼らの音楽を愛する多くのファンにとって、常に重要な位置を占める一枚です。未発表音源からライブ音源まで収録された、この2枚組アルバムは、彼らの音楽的才能と、その短くも濃密な活動の歴史を改めて私たちに提示し続けています。CD版に収録されたHigh Wycombe Town Hallでのライブ音源は、まさに彼らの最後の輝きを凝縮したような内容となっており、より深く彼らの音楽を理解する手助けとなるでしょう。

長年の時を経ても色褪せることのない『スティル』は、これからも多くの人々に感動と興奮を与え続ける、不朽の名盤として、音楽史にその名を刻み続けることでしょう。

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