ステファヌス1世 (ローマ教皇)

ステファヌス1世（Stephanus I、200年 - 257年8月2日）は、ローマ教皇として254年から257年8月2日まで在位しました。彼はギリシャ系の出身であり、その教皇在位期間は、キリスト教が迫害の嵐に見舞われていた時代と重なります。

特に、デキウス帝による迫害は、多くの信徒が信仰を捨てるという事態を引き起こしました。この状況下で、教会は迫害を逃れて信仰を放棄した信徒たちが、再び教会共同体への復帰を希望する場合、彼らをどのように受け入れるべきかという問題に直面しました。また、彼らに再洗礼を施すべきかどうかも大きな議論の的となりました。

この問題に関して、ステファヌス1世は、カルタゴの司教キプリアヌスと見解を共有していました。ローマの伝統に従い、異端であっても一度洗礼を受けた者に対しては、その洗礼の有効性を認め、再洗礼の必要はないという立場を明確にしました。この教皇の指示は全教会に伝えられましたが、アフリカの諸教会はこれに同意しませんでした。

ステファヌス1世の業績として特筆すべきは、彼がローマ司教の優位性を初めて主張した点です。これは、後の教皇意識の萌芽として、多くの教会史家によって重要視されています。カトリック教会では聖人とされ、記念日は8月11日です。

ステファヌス1世が殉教者と見なされるようになったのは、後世の伝承によるものです。『黄金伝説』を著したヤコブス・デ・ウォラギネは、彼の殉教の様子を次のように伝えています。

当時の皇帝ウァレリアヌスとガリエヌスは、まず教皇に仕える聖職者10名を捕らえ、裁判を行うことなく斬首しました。その翌日、教皇自身も捕らえられ、マルス神殿に連行されました。ステファヌス1世は、神殿の前で「どうか、この虚飾に満ちた建物を倒してください」と主に祈りを捧げました。すると、神殿の大部分が崩壊し、多くの人々が逃げ惑う中、教皇は聖女ルキアが葬られている教会へと向かいました。皇帝はさらに多くの兵士を差し向けましたが、教皇は恐れることなく聖務を続け、その場で斬首されたと伝えられています。この殉教の物語は、彼の信仰の強さと、神への揺るぎない忠誠心を象徴するものとして語り継がれています。

ステファヌス1世の教皇としての活動は、迫害という困難な状況下で教会の秩序を維持し、教義の統一を図るためのものでした。彼の決断は、後の教会史に大きな影響を与え、教皇の権威を確立する上で重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

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