デキウス

ガイウス・メッシウス・クィントゥス・トラヤヌス・デキウス：ローマ帝国中期の皇帝

ガイウス・メッシウス・クィントゥス・トラヤヌス・デキウス（201年頃 - 251年）は、ローマ帝国の皇帝（在位：249年 - 251年）として知られています。下パンノニア属州ブダリア出身の彼は、中央政府での豊富な経験を有していました。232年には執政官を務め、その後は下ゲルマニアやモエシア属州の総督、ヒスパニア・タッラコネンシス総督を歴任するなど、着実にキャリアを積んでいきました。

245年には、皇帝フィリップス・アラブスによってドナウ川駐留軍の指揮官に任命されます。この地でゴート族を相手に勝利をおさめたデキウスは、兵士たちから皇帝に推戴され、渋々ながらその地位を受け入れることになります。

249年9月頃、マケドニア属州ベロエア（現在のブルガリア、スタラ・ザゴラ）にて、フィリップス・アラブスと激突。この戦いでフィリップス・アラブスは戦死し、デキウスはローマへ入城して帝位を掌握しました。

ローマ皇帝として、デキウスはコロッセオなどの既存建築物の修復や、デキウス浴場などの新築事業にも着手しました。しかし、彼の治世は平和なものではありませんでした。ドナウ川を越えてきたゴート族の脅威に再び直面し、250年には戦争を開始します。

この戦争は、トラキア総督の反乱などもあり長期化。250年、ウェロナかマケドニア属州ベロエアでゴート人に敗れるという苦杯をなめます（ベロエアの戦い）。そして、251年7月頃のアブリットゥスの戦いにおいて、ゴート族の罠にはまり、長男で共同皇帝であったヘレンニウス・エトルスクスと共に戦死しました。

デキウスの死後、後継皇帝には、ローマに留まっていた次男ホスティリアヌス（プリンケプス・ユウェントゥティス：皇太子）が予定されていましたが、ドナウ遠征軍はガイウス・ウィビウス・トレボニアヌス・ガッルスを皇帝に推戴しました。内乱を回避するためか、軍の圧力を受けたのかは不明ですが、トレボニアヌスはホスティリアヌスを養子として共同皇帝としました。

デキウスの治世は、賢明な政策もあったものの、キリスト教徒への迫害を行ったことで、歴史的評価は複雑なものとなっています。伝統的なローマの信仰を強化しようとした彼の試みは、結果としてローマ帝国内部における緊張を高めることにも繋がったと言えるでしょう。彼の息子たち、そして彼自身の死は、3世紀のローマ帝国が直面していた、内部の不安定さと外部からの脅威の大きさを象徴する出来事だったと言えるでしょう。デキウスの生涯は、成功と失敗、そして時代の激動を反映した、ドラマチックなものでした。彼の治世と最期は、現在も歴史家たちによって研究され続けています。

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