ステラ・ダラス (1937年の映画)

ステラ・ダラス：階級と母性、そして女性の選択

1937年、ハリウッド黄金期を代表するメロドラマとして公開された『ステラ・ダラス』。本作品は、工場労働者の娘ステラが、上流階級の男性スティーブンと結婚し、華やかな生活を送るも、階級の壁や自身の出自に苦悩する物語です。主演は、バーバラ・スタンウィック。彼女の圧倒的な存在感が、ステラの複雑な感情を見事に表現しています。

上流階級への憧憬と結婚

物語は、第一次世界大戦後のマサチューセッツ州の工場街で幕を開けます。主人公ステラは、貧しい生活から抜け出すため、工場重役のスティーブンに猛烈なアプローチをかけ、結婚に成功します。ステラは上流階級の生活様式を研究し、見事にスティーブンを射止めますが、その努力の裏には、階級社会への強い憧れと、自身の置かれた状況への不満が隠されています。

結婚生活と階級の壁

結婚後、ステラとスティーブンには美しい娘ローレルが誕生します。しかし、ステラの粗野な育ちと、下品な友人関係は、洗練された上流社会では浮いてしまいます。ステブンはステラの振る舞いを改めさせようとしますが、二人の間には溝が生まれていきます。

別居と新たな出会い

最終的に、スティーブンはニューヨーク勤務を機にステラと別居します。一方、スティーブンはニューヨークでかつての婚約者ヘレンと再会します。ヘレンは裕福な未亡人で、優しく気品のある女性です。スティーブンはヘレンに惹かれ始めます。

娘の幸せと母の決断

ローレルは美しく成長し、上流階級の青年リチャードと恋に落ちます。しかし、ステラの粗野な振る舞いは、上流社会の人々から嘲笑の的になります。ステラは、自分のせいでローレルが傷つけられることに気づき、大きな衝撃を受けます。

ステラは、ローレルの幸せのために、スティーブンと離婚し、ヘレンとスティーブンを結婚させようとする自己犠牲の決断をします。しかし、その真意を知らなかったローレルは、母に深く傷つき、ヘレンの元へ身を寄せます。

ラストシーンとその後

数年後、ローレルはリチャードと結婚式を挙げます。その式典の遠くから、雨に打たれながら娘を見つめるステラは、かつての貧しい暮らしに戻っていくのでした。

社会背景と映画製作

『ステラ・ダラス』は、1923年に出版された小説の映画化作品です。プロデューサーはサミュエル・ゴールドウィン、監督はキング・ヴィダーという、ハリウッドを代表するスタッフ陣によって製作されました。作品には、1930年代のアメリカ社会の階級格差や女性の地位といった問題が反映されています。

批評と解釈

『ステラ・ダラス』は、公開当初は「お涙頂戴映画」として低く評価されていましたが、近年では、社会階級や性役割、母娘関係などをテーマとした、重要な映画作品として再評価されています。様々な研究者によって、フェミニスト的視点、社会経済学的視点など、多角的な解釈が提示されています。

特にフェミニスト批評においては、ステラの自己犠牲的な行動が、家父長制社会における女性の役割を反映しているという解釈や、母娘の共同作業としての解釈など、様々な見解が提示され、活発な議論が展開されています。

今日でも『ステラ・ダラス』は、アメリカ映画史において重要な位置を占め、現代社会における女性の生き方や階級社会の問題を考えさせる、多くの示唆に富む作品と言えます。

もう一度検索