ステレオカメラ

ステレオカメラとは

ステレオカメラは、人間の両眼視差を利用して、対象物を異なる複数の視点から同時に撮影することで、奥行き情報を記録するカメラです。主に立体写真の撮影に用いられ、1台のカメラで立体的な空間を捉えることができます。

ステレオカメラの構造

ステレオカメラは、基本的に2つ以上のレンズとシャッター機構を1つの筐体に収めた構造をしています。複数のレンズが一定間隔で配置されており、それぞれのレンズで捉えたわずかに異なるアングルの視差を利用することで、立体的な映像を作り出すことが可能です。複数のシャッターを同時に制御することで、動きのある被写体でも立体的に撮影できます。

ステレオカメラで複数枚の写真を同時に撮影することから、フィルム送りでコマが重複する問題が生じ、それに対応するために様々なフレーム規格が考案されました。

代表的なフレーム規格

ステレオカメラでは、フィルムの送り方や操作性を考慮し、様々なフレーム規格が用いられています。以下に代表的なものを紹介します。

35mmフィルム

リアリスト・サイズ：24mm×23mmのほぼ正方形のフレームで、ステレオペアの間に2コマ分の間隔を設け、2コマずつフィルムを送ることで効率的に撮影できます。マウントは41mm×101mmです。

ヨーロピアン・サイズ：24mm×30mmの横長のフレームで、ステレオペアの間に1コマ分の間隔があります。フィルム送りは1コマ、3コマを繰り返します。マウントは41mm×101mmです。

ハーフフレーム・サイズ：18mm×24mmの縦長のフレームで、通常のカメラにステレオアダプターを装着した場合によく見られます。通常のカメラのフレームサイズを2分割してステレオペアを撮影します。

ビューマスター・サイズ：12mm×13mmの横長のフレームで、専用のカメラで撮影される他、他のサイズのフィルムからデュープして作成されることもあります。リール状のマウントに収められ、直径は9cmです。

ガラス乾板

ガラス乾板の場合は、フィルムのように切断が難しいため、マウント作業を行わず、そのままビューアーに挿入して鑑賞します。

4.5×10.7cm判
6×13cm判

120フィルム・ブローニーフィルム

6×6cm判：ガラス乾板の6×13cm判から発展した規格で、二眼レフカメラの元になりました。

立体写真を見るために

印画紙に現像した立体写真を見るには、裸眼立体視の他に、ビュワーと呼ばれる専用の器具を使うのが一般的です。ビュワーには、主に以下の2つのタイプがあります。

反射式ビュワー：印画紙に現像した写真を差し込み、光を反射させて見るタイプ。
透過式ビュワー：リバーサルフィルムを専用マウントに挟み、光を透過させて見るタイプ。光源内蔵タイプもあります。

透過式ビュワーの方が見やすく、迫力のある立体視体験が得られます。また、見る方向によって絵が変わるレンチキュラー処理を用いた立体写真もあります。

主な製品

ステレオカメラ

Stereo Realist（アメリカ）：リアリスト・サイズのフレームを採用した最初のカメラ。跳ね上げ式レンズカバーが特徴。

Fed stereo（ウクライナ）：ヨーロピアン・サイズのフレームで、自動露出機能付き。

TDC Stereo Vivid（アメリカ）：リアリスト・サイズのフレーム。絞り、シャッタースピード、距離調節ダイヤルが上面にあり、使いやすい。

SPUTNIK（旧ソ連）：6×6mm判の二眼レフ型ステレオカメラ。

Loreo Stereo Camera（中国）：ハーフフレーム・サイズで、現行品として入手可能。2D/3D撮影切り替え可能な機種もある。

Horseman 3D（日本）：ヨーロピアン・サイズのフレーム。シャッター機構が特徴。

Stereo Leader（日本）：リアリスト・サイズのフレーム。ステレオ/通常写真切り替え可能。

Stereo Graphic（アメリカ）：リアリスト・サイズのフレーム。固定焦点の軽量モデル。

NIMSLO（香港）：ハーフフレーム・サイズでレンチキュラープリント用。

NISHIKA（香港）：ハーフフレーム・サイズでレンチキュラープリント用。

View-Master Personal（アメリカ）：ビューマスター用のメディアを個人作成するためのカメラ。

撮りっきりコニカ3D（日本）：レンチキュラープリント用の使い捨てカメラ。

Kodakスナップキッズ3D（不明）：レンチキュラープリント用の使い捨てカメラ。

FinePix REAL 3D W1（日本）：ステレオデジタルカメラ。ズーム機能、動画撮影、裸眼立体表示に対応。

SONY MHS-FS3 “Bloggie 3D”：2眼モバイルHDスナップカメラ。

LUMIX DMC-3D1：ステレオデジタルカメラ。

ステレオアダプター

PENTAX ステレオアダプター：一眼レフカメラに取り付け、ハーフフレームサイズのステレオ写真を撮影。

Loreo Stereo Lens-In-A-Cap：一眼レフカメラに取り付け、ハーフフレームサイズのステレオ写真を撮影。

フジカラー販売 立体写真アダプター：使いきりカメラに取り付け、ハーフフレームサイズのステレオ写真を撮影。

Tri-Delta：横長のハーフフレームサイズの立体写真を撮影するためのアダプター。専用ビュワーが必要。

パナソニック LUMIX G 12.5mm/F12：マイクロフォーサーズ規格の交換レンズで、立体写真撮影が可能。

ステレオカメラの活用例

ステレオカメラはその特性から、交通事故や労災事故の現場において、事故状況を立体的に記録するのに役立っています。

まとめ

ステレオカメラは、立体的な視覚体験を提供するための独自の技術が詰まったカメラです。様々なフレーム規格や製品があり、用途に応じて使い分けることができます。現在では、デジタルカメラやスマートフォンで手軽に立体写真が楽しめるようになりましたが、フィルムカメラの時代から多くの愛好家によってその魅力が受け継がれています。

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