ストックカー・ブラジル

ストックカー・ブラジル選手権：南米を代表するモータースポーツの深淵

ブラジル国内で圧倒的な人気を誇るストックカー・ブラジル選手権（SCB）。1979年にスタートしたこの選手権は、NASCARを彷彿とさせる迫力あるレースと、F1ドライバーなどの著名なレーサーの参加により、南米を代表するモータースポーツへと成長しました。本記事では、その歴史、レギュレーション、そして魅力を余すことなくご紹介します。

誕生から発展まで：NASCARの影響とブラジル独自の進化

SCBの前身は、1970年代後半、シボレー・オパラとフォード・マベリックがしのぎを削った「ディヴィジョン1選手権」でした。NASCARの成功に刺激を受けたブラジルのシボレー正規代理店協会は、この選手権を改編する形でSCBを設立。1979年4月、リオグランデ・ド・スル州のタルマ・サーキットで、シボレー・オパラによるワンメイクレースとして幕を開けました。

初期のSCBは、F1やインディカーで活躍したブラジル人ドライバーたちが多く参戦。中でも、インゴ・ホフマンはF1から転向し、SCBで7連覇を含む12度のタイトルを獲得するなど、選手権の歴史に大きな足跡を残しました。1980年代には平均5万人の観客を集め、1982年にはポルトガルでもレースを開催するなど、その人気はブラジル国内にとどまらず、国際的な広がりを見せていました。

2000年代に入ると、シャシーやエンジンのレギュレーションが変更され、より洗練されたマシンが登場。2005年には、シボレー以外も参戦を認められるマルチメイクが解禁となり、三菱、フォルクスワーゲン、プジョーといったメーカーが参戦。レースはさらに激しさを増しました。しかし、その後一部メーカーは撤退し、2017年には再びシボレーワンメイク体制に戻りました。2020年にはTOYOTA GAZOO Racing Brasilが参入、そして2025年には市販のクロスオーバーSUVがベースとなるなど、常に進化を続ける選手権です。

レースの特徴：サーキットロードコースと独自のレギュレーション

NASCARと同様に「ストックカー」の名を冠するSCBですが、NASCARがオーバルトラックで行われるのに対し、SCBは欧州型のサーキットロードコースで行われます。ブラジル国内を中心に開催されていますが、過去にはポルトガルやアルゼンチンでもレースが開催されました。特にアルゼンチンのスーパーTC2000とは交流が深く、両選手権のドライバー交流や合同開催も盛んに行われています。

また、NASCARに倣って2006年からチャンピオン決定のためのプレイオフ制度が導入。さらに、高額賞金をかけた「ミリオン・レース」や、ゲストドライバーとペアを組んで戦う「レース・オブ・ダブルス」など、独特のイベントも開催されています。近年では、SNSのファン投票でオーバーテイク回数を増やすことができる“FUN PUSH”システムも導入されるなど、エンターテイメント性も追求されています。

マシン：進化を続ける高性能マシン

SCBのプロシリーズで使用されるマシンは、JLレーシングが製造するパイプフレーム構造のFR車。鉄とアルミニウムの組み合わせによる堅牢なフレームに、市販車と同一の外観を持つガラス繊維製のボディが装着されています。エンジンは、排気量6.8リッターのV8自然吸気エンジンで、通常時で約460馬力、オーバーテイクボタン使用時で約550馬力を発生します。燃料はエタノールを使用し、タイヤはピレリが独占供給しています。最高速度は270km/hに達し、0-100km/h加速は3.5秒と、その性能は非常に高いレベルです。

下位カテゴリー：育成からステップアップへ

SCBには、プロシリーズの下位カテゴリーとして「ストックライト」と「ストックJr.」が存在しました。ストックライトは、プロシリーズへのステップアップを目的としたシリーズで、現在はプロシリーズの直下に位置付けられています。一方、ストックJr.は若手ドライバー育成を目的としたシリーズでしたが、現在は消滅しています。これらのカテゴリーは、将来のSCBを担うドライバーを育成する上で重要な役割を果たしています。

伝説のドライバーたち：F1出身者からブラジルを代表するスターまで

SCBには、数多くの名ドライバーが参戦してきました。F1で活躍したインゴ・ホフマン、チコ・セラ、そして近年ではフェリペ・マッサなど、多くの著名なドライバーがSCBでその腕を振るっています。他にも、アッフォンソ・ジアフォーネ、ゼッカ・ジアフォーネ、パウロ・ゴメス、カカ・ブエノ、ダニエル・セラなど、ブラジルを代表する名ドライバーが数多く輩出され、選手権の歴史を彩ってきました。

まとめ：進化し続けるブラジルのモータースポーツ

SCBは、NASCARの影響を受けながらも、ブラジル独自の進化を遂げ、南米を代表するモータースポーツへと成長しました。その歴史、レギュレーション、マシン、そしてドライバーたちは、多くのファンを魅了し続けています。これからも、SCBは進化を続け、世界中のモータースポーツファンを熱狂させることでしょう。

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