ストックホルムの密使

『ストックホルムの密使』

『ストックホルムの密使』は、佐々木譲による日本の小説であり、第二次世界大戦に関連する秘話を描いた三部作のひとつです。この作品は、新潮社のレーベル「新潮ミステリー倶楽部」にて書き下ろしとして発表されました。物語は、太平洋戦争の終戦が迫る中、ストックホルムの日本海軍武官がアメリカの原子爆弾に関する情報やソ連の対日参戦を察知し、密使を東京へ派遣するという緊迫した情景から始まります。密使の活躍は、大和田市郎武官の夫人の回想を通じて語られていきます。

主なあらすじ

物語は、パリに住む賭博好きの日本人、森四郎を主人公に進行します。彼はレジスタンスに巻き込まれ、ゲシュタポとのトラブルにより国外追放となり、スウェーデンに逃れることになります。そこで彼は駐在武官の大和田市郎から、ベルンにいる日本大使館に極秘情報を届ける依頼をされます。最初は躊躇していた森ですが、大和田夫人の魅力に触れ、依頼を引き受けることになります。

森は亡命ポーランド人将校のヤン・コワルスキと共に、情報を届けるために旅立ちます。しかし、大使館での接触は失敗に終わり、彼らはシベリアを横断しながら日本へ向かうことになります。一方、海軍省の書記官・山脇順三は、和平派の海軍高官と共に終戦に向けた活動を進めており、彼の動向が憲兵将校の秋庭保に注目されます。彼は、山脇の周囲で暗殺計画の噂を嗅ぎ取り、その危険を排除しようと奔走します。

登場人物の紹介

森四郎

本作の主人公であり、自身を「バロン」と名乗っています。彼は孤児として日本で生まれましたが、後にパリで賭博打ちとして生計を立てていました。ドイツの国外追放に伴いストックホルムに避難し、大和田からの依頼によって密使の使命を負うことになります。

ヤン・コワルスキ

ポーランドの亡命軍の将校で、大和田の指示に応じて森に協力し、日本に向かう道を共にします。彼はストックホルムで赤軍の情報を提供する役割も果たしていました。

大和田市郎

日本海軍のスウェーデン駐在武官であり、戦争終結のために動いています。彼はアメリカによる原子爆弾使用の情報を掴み、その前に情報を東京に届けるべく密使を派遣することを決意します。

山脇順三

海軍省の書記官であり、終戦に向けた動きをリードしている重要なキャラクターです。彼の視点を通じて、太平洋戦争の始まりから終結にかけての流れが描かれています。

秋庭保

憲兵少佐で、終戦派の動きを探る役割を担っています。彼は高官による暗殺計画を察知し、その陰に潜む問題に対処しようとします。

書籍情報

• - 発行日: 1994年10月
• - 文庫化: 1997年12月

作品の内容は、キャラクターの内面や歴史的背景を交えながら、緊張感ある戦時の状況を浮き彫りにしており、読者に深い印象を与えるものとなっています。また、NHKでは1995年に本作を基にしたテレビドラマが放送され、多くの視聴者に感銘を与えました。

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