新潮ミステリー倶楽部

新潮ミステリー倶楽部は、新潮社が1980年代から2000年代にかけて刊行していたミステリー小説のレーベルです。文芸書の老舗出版社である新潮社が、本格的にエンターテインメント作品に進出した叢書として知られています。

レーベルの特徴

新潮ミステリー倶楽部の作品は、四六判の上製本で書き下ろし長編として展開されていました。ミステリー、サスペンス、冒険小説など、幅広いジャンルの作品が刊行され、多くの読者を魅了しました。

新潮社主催で1996年から2000年まで全5回実施された"新潮ミステリー倶楽部賞"の受賞作は、当レーベルから書籍化されました。この賞は、ミステリー界の新たな才能を発掘する登竜門として注目され、受賞作家の中には、後に人気作家となる者も現れました。

収録作品の多くは、後に文庫化され、より多くの読者に親しまれることとなりました。

刊行作品

以下は、新潮ミステリー倶楽部から刊行された主な作品です。（年代順）

1988年
『遥かなる虎跡』景山民夫
『さまよえる脳髄』逢坂剛
『ベルリン飛行指令』佐々木譲
『黄金機関車を狙え』日下圭介
『忠臣蔵 元禄十五年の反逆』井沢元彦
『ブルータスは死なず』三浦浩
『あなたの知らないあなたの部屋』青柳友子
1989年
『切断』黒川博行
『白い手の錬金術』本岡類
『鳥人計画』東野圭吾
『土俵を走る殺意』小杉健治
『完全犯罪研究室』由良三郎
『赤い旅券(パスポート)』井上淳
『エトロフ発緊急電』佐々木譲
『クラインの壺 』岡嶋二人
『軍艦島に進路をとれ』保田由雄
『傷だらけの銃弾』楢山芙二夫
1990年
『北緯50度に消ゆ』高橋義夫
『ヒポクラテスの暗号』山崎光夫
『K(ケイ)』久松淳
『霧越邸殺人事件』綾辻行人
『レベル7 (セブン) 』宮部みゆき
『クリスマス黙示録』多島斗志之
『行きずりの街』志水辰夫
1991年
『熱帯夜』山崎洋子
『神の火』髙村薫
1992年
『ダレカガナカニイル…』井上夢人
『リヴィエラを撃て』高村薫
『白公館の少女』伴野朗
1993年
『夜ごとの闇の奥底で』小池真理子
『異人たちの館』折原一
『真冬の誘拐者』本岡類
『臓器農場』帚木蓬生
『百万ドルの幻聴(メロディ)』斎藤純
1994年
『ストックホルムの密使』佐々木譲
『火天風神』若竹七海
『鋼鉄の騎士 』藤田宜永
1995年
『蝦夷地別件』(上下巻) 船戸与一
『僕を殺した女』北川歩実
『ホワイトアウト 』真保裕一
『家族狩り』天童荒太
1996年
『海は涸いていた』白川道
『硝子のドレス』北川歩実
『凍える牙』乃南アサ
『髑髏は長い河を下る』森山清隆
『神の火』(新版) 高村薫
1997年
『枯れ蔵』永井するみ "第1回新潮ミステリー倶楽部賞"受賞
『疫病神』黒川博行
『エルミタージュの鼠』熊谷独
『猿の証言』北川歩実
『ワシントン封印工作』佐々木譲
1998年
『骸の誘惑』雨宮町子 "第2回新潮ミステリー倶楽部賞"受賞
『樹縛』永井するみ
『さらばスティーヴンソン』森山清隆
『夜は罠をしかける』加治将一
1999年
『闇の楽園』戸梶圭太 "第3回新潮ミステリー倶楽部賞"受賞
『紫の悪魔』響堂新 "第3回新潮ミステリー倶楽部賞島田荘司特別賞"受賞
『愛こそすべて、と愚か者は言った』沢木冬吾 "第3回新潮ミステリー倶楽部賞高見浩特別賞"受賞
『血ダルマ熱』響堂新
『そして二人だけになった』森博嗣
『煉獄回廊』野崎六助
『溺れる魚』戸梶圭太
2000年
『栄光一途』雫井脩介 "第4回新潮ミステリー倶楽部賞"受賞
『大いなる聴衆』永井するみ
『鎖』乃南アサ
『オーデュボンの祈り』伊坂幸太郎 "第5回新潮ミステリー倶楽部賞"受賞
2001年
『眩暈を愛して夢を見よ』小川勝己
『未確認家族』戸梶圭太
2002年
『ラッシュライフ』伊坂幸太郎
『百人一首 一千年の冥宮』湯川薫
『撓田村事件―iの遠近法的倒錯』小川勝己

レーベルの終焉とその後

2000年代に入り、新潮ミステリー倶楽部は刊行を終了しました。しかし、レーベルから生まれた作品群は、現代ミステリー史における重要な足跡として、今もなお多くの読者に愛され続けています。

また、刊行予定作家として笠井潔、島田荘司、法月綸太郎の三氏が予告されていましたが、未刊行となっています。笠井潔の作品は『鏡の国の殺人』と仮題も記載されていました。

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