ストッピングパワー

ストッピングパワーの解説

ストッピングパワー（Stopping power）は、拳銃や小銃などの火器から発射された銃弾が対象生物、特に人間に命中した際に、その行動をどの程度阻害できるかを示す指標です。特に人間に目を向ける場合、この概念は「マン・ストッピングパワー」と呼ばれます。重要なのは、行動不能にさせることがすべてであり、必ずしも即死を引き起こさなければならないわけではない点です。本稿では、このマン・ストッピングパワーについて深く探っていきます。

ストッピングパワーの要素

ストッピングパワーは、数多くの要因によって影響を受けます。特に注目されるのは、神経学的な影響、物理学的な影響、精神的な影響の3つです。この3つの観点から、銃弾が対象に与える影響を見ていきます。

神経学的な影響

銃弾が目標の中枢神経系を破壊することによって、その行動を阻害することができます。中でも、脳幹部への銃撃は特に効果的とされています。脳幹を狙うことで、随意運動が確実に制御不能となり、その結果として行動が阻害されます。けん銃などの低威力の弾薬を用いた場合、脳幹への当たりが確実に行動不能を引き起こす唯一の部位とされていますが、高威力の小銃の場合は、頭部が弾丸の衝撃により破裂することが多いため、より効果的な神経伝達の阻害が期待できます。

物理学的な影響

ストッピングパワーの理解には物理学的な観点も重要です。1896年、ドイツの学者は、80ジュールの運動エネルギーを持つ12.5gの弾薬が兵士に対して十分な威力を持つことを発表しました。このエネルギーの大きさは、NATOでも後に承認されました。

さらに、銃弾の形状や設計が進むにつれて、エネルギーの伝達効率も重要視されるようになりました。例えば、ある指針では、特定の銃弾が弾道ゼラチンに対し、全長で20～30cmの侵入長を持ち、最初の5cmで30〜60 J/cmのエネルギーを放出することが求められています。

大量出血による影響

動脈が破れることにより大量出血が起こると、失血性ショックにより行動が不可能となります。アメリカ海兵隊では、狙撃の際に股間を狙えるよう教えています。これは股間を狙うことで大腿動脈や下行大動脈を狙って撃つことができるためです。

精神的な影響

銃撃事件の被害者に関する調査によると、致命的な部位に撃たれていないにもかかわらず、40-50%のケースで被撃者が即座に行動不能になることが確認されています。この現象は、メディアや映画などによる銃の威力の過剰な描写によるものであると言われています。実際、44マグナムの弾薬でも日常動作の1/20の力しか発揮できない状況で、心理的な要因から撃たれたと感じてしまうことがあります。

歴史的背景

マン・ストッピングパワーを巡る議論は、歴史的にも数多くの場面で問題視されてきました。

• - 米比戦争（1899年〜1913年）: アメリカ軍は、.38ロングコルト弾の威力不足に直面し、.45ACP弾を使用するM1911を採用しました。
• - マイアミ銃撃事件（1986年）: FBI捜査官が重武装の銀行強盗と対峙した際、銃撃戦の中で致命的ではない部位に当たったにもかかわらず、行動が停止しなかった事例がありました。
• - コアテス巡査殉職事件（1992年）: サウスカロライナ州での事件で、巡査が複数の弾丸を命中させたにもかかわらず、応射を受けて殉職しました。

ストッピングパワーに関する理解を深めるためには、これらの要因と歴史的背景を考慮することが重要です。

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