ストリートファイター ザ・ムービー

ストリートファイター ザ・ムービー：実写映画を題材とした格闘ゲームの挑戦

1995年5月30日、カプコンよりアーケード用格闘ゲーム『ストリートファイター ザ・ムービー』が稼働開始されました。開発は米国インクレディブルテクノロジーズ社が担当しました。この作品は、1994年に公開されたハリウッド実写映画『ストリートファイター』をベースに制作されており、映画版キャストのアクションをモーションキャプチャーで収録した、当時としては画期的な取り組みがなされました。

映画とゲームの融合、そして独自性の追求

本作は、単なる映画のゲーム化にとどまらず、独自のゲームシステムを導入することで、シリーズ従来作とは大きく異なるゲーム性を実現しています。映画版を忠実に再現したキャラクターデザインや、映画版に準拠した一部キャラクター名の変更（インストラクションカードでは、映画版と日本版ゲーム版の両名が併記されています）といった点が、映画ファンにもアピールする要素となっています。

しかし、ゲームシステム面においては、『ストリートファイターII』シリーズとは一線を画す独自性が際立ちます。空中コンボ、必殺技キャンセル、連続投げ返し、体力回復技など、斬新なシステムが多数導入されています。特に、ボタンを押しっぱなしにして離すという独特のコマンド入力方式を採用した必殺技は、当時としては非常に複雑で、高度なテクニックを要求しました。

さらに、デンジャー必殺技と呼ばれる、体力ゲージが減少した際に使用可能な超必殺技も特徴的です。これはスーパーコンボゲージを消費しないため、戦略的な使い分けが可能です。また、全てのキャラクターに即死コンボが存在するなど、高度なテクニックと戦略性が必要とされる、対戦格闘ゲームとして高い完成度を誇っています。

複雑なシステムと個性豊かなキャラクターたち

本作のゲームシステムは、その複雑さから多くのプレイヤーを悩ませました。投げ返しシステムは特に複雑で、キャラクターごとに異なるコマンドを覚える必要があり、投げ返し合戦を制するには、全キャラクターの投げ返しコマンドを熟知していなければなりませんでした。投げ抜けシステムも存在しましたが、投げ返し合戦の末路は、最初に投げた側が不利になる傾向がありました。

登場キャラクターは、映画版を基にしているため、一部キャラクターの名前が日本版ゲームとは異なっています。また、『ストリートファイターII』シリーズでおなじみのキャラクターに加え、映画オリジナルキャラクターであるブレードや、本作オリジナルキャラクターのアーケイン、カイバー、F7も登場します。これらのキャラクターは、それぞれ個性的な必殺技や戦闘スタイルを持っており、ゲームに多様性を与えています。

特にガイルは性能が優遇されており、圧倒的な強さを誇っていました。一方、サガットは目から怪光線を放つ「イーブルアイ」というオリジナル必殺技を使用するなど、シリーズ従来作にはない新たな魅力が加えられています。

開発秘話と隠された要素

本作の開発は、映画の撮影と並行して行われました。カプコンの開発チームはオーストラリアに滞在し、映画制作の合間を縫って俳優陣のアクションポーズを収録しました。しかし、開発元のインクレディブルテクノロジーズ社にはアクションゲームの開発経験が乏しかったため、カプコンの開発スタッフが、格闘ゲームの基礎を教えるために1ヶ月間も費やしたという逸話も残っています。

また、本作には隠しコマンドが存在し、『ストII』のBGMへの変更や、2人1組で戦うタッグチームモード、ライフゲージが表示されないノーライフモード、ステージ上のオブジェクトの爆発演出など、様々な隠し要素が用意されています。

後世への影響

本作は、実写映画とゲームの融合という斬新な試み、そしてオリジナル性の高いゲームシステムによって、多くのプレイヤーに衝撃を与えました。その独特のゲーム性や、映画との関連性から、現在でも多くのファンを魅了し続けています。後に登場する『ストリートファイターV』においても、本作オリジナルキャラクターであるブレード、アーケイン、カイバー、F7が「シャドルー・トルーパーズ」の一員として新たな設定が与えられるなど、その影響は現代にも及んでいます。

参考文献：『ALLABOUTカプコン対戦格闘ゲーム1987-2000』（電波新聞社、スタジオベントスタッフ発行）、太田出版『超クソゲーVR』（多根清史、阿部弘樹、箭本進一著）213ページから217ページ

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