ストレンジ男爵

ストレンジ男爵位：複雑な歴史を紐解く

ストレンジ男爵（Baron Strange）は、イングランド貴族の男爵位であり、その歴史は複雑で興味深いものです。本稿では、5度にわたる創設と、各期の男爵家系、そして現在に至るまでの経緯を詳細に解説します。

特筆すべき点として、ストレンジ男爵位は、男子がいない場合、姉妹間に優劣なく女系継承が行われるという点があげられます。 このため、家系の継承は時に複雑さを増し、長期にわたる保持者不在（abeyant）期間を生み出すことにもなりました。また、5度の創設のうち1度は、議会側の勘違いから生じたという特異な経緯を持つものも含まれます。

各期のストレンジ男爵

第1期：エレズミアのストレンジ男爵 (1295年)

1295年、ロジャー・ル・ストレンジがエレズミアのストレンジ男爵に叙せられました。ヨークシャーの保安官やトレント南部の巡回判事などを務めた人物でしたが、子宝に恵まれず、彼の一代で断絶しました。

第2期：ノッキンのストレンジ男爵 (1299年)

第1期男爵の甥にあたるジョン・ル・ストレンジが、1299年にノッキンのストレンジ男爵位を継承しました。エドワード1世のウェールズ、スコットランド征服に従軍した武勇ある人物でした。この系統は、女系継承を経て、ストレンジ家からダービー伯爵家（スタンリー家）、そしてセント・デイヴィッズ子爵家（フィリップス家）へと受け継がれ、現在に至っています。しかし、1921年に継承者が確定するまで321年間もの長きにわたり、保持者不在の状態が続いたという特異な歴史を持っています。

第3期：ブラックミアのストレンジ男爵 (1309年)

第1期、第2期男爵と血縁関係にあったファルク・ル・ストレンジが、1309年にブラックミアのストレンジ男爵位に叙されました。この系統は、女系継承によりストレンジ家からシュルーズベリー伯爵家（タルボット家）、ノーフォーク公爵家（ハワード家）へと移りましたが、1777年に9代ノーフォーク公エドワード・ハワードの死後、現在に至るまで保持者不在となっています。

第4期：ストレンジ男爵 (1326年)

ノッキンのストレンジ男爵（第2期）の庶子であるユーバラス・ル・ストレンジが、1326年にストレンジ男爵位に叙せられました。しかし、彼にも子供がなく、彼の一代で断絶しました。

第5期：ストレンジ男爵 (1628年)

1628年、議会がノッキンのストレンジ男爵位（第2期）をダービー伯爵家が未だ保持していると誤認した結果、ダービー伯爵の法定推定相続人であったジェームズ・スタンリーがストレンジ男爵に叙せられました。これは、事実上の新規創設とみなされています。この系統は、女系継承を経て、スタンリー家からアソル公爵家（マレー家）、さらにドラモンド家へと受け継がれ、現在に至っています。

各期の継承者一覧

上記5期それぞれの男爵位継承者については、本文中に詳細な家系図が示されています。各期の男爵、その子孫、そして女系継承による家系の変遷をたどることで、ストレンジ男爵位の複雑で魅力的な歴史の一端を垣間見ることができるでしょう。

まとめ

ストレンジ男爵位は、その5度の創設、複雑な継承、そして長期にわたる保持者不在期間など、多くの特異な点を有する、イングランド貴族史において特筆すべき爵位です。女系継承という要素が、家系の変遷に大きな影響を与え、現在に至るまでその歴史に彩りを添えていると言えるでしょう。本稿が、ストレンジ男爵位の歴史を理解する上で、一つの参考資料となれば幸いです。

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