ハワード家

ハワード家：イギリス貴族の名門

ハワード家は、15世紀にジョン・ハワードがノーフォーク公爵に叙せられたことを起源とする、イギリスの由緒ある貴族の家系です。その歴史は、政治的陰謀、宗教的迫害、そして壮大な邸宅の建設と、波乱に富んでいます。現在、ハワード家には、ノーフォーク公爵家、エフィンガム伯爵家、サフォーク伯爵家、カーライル伯爵家、ペンリスのハワード男爵家の5つの爵位を持つ家系が存在します。

ハワード家の歴史

本家

ハワード家の記録に残る最初の人物は、14世紀初頭にノーフォークの地主であり裁判官であったウィリアム・ハワードです。その後、ハワード家は州長官や庶民院議員を輩出し、イースト・アングリア地方の名門として台頭しました。特に、サー・ロバート・ハワードが初代ノーフォーク公トマス・ド・モウブレーの娘マーガレットと結婚したことで、家格は飛躍的に向上しました。その息子ジョン・ハワードが1483年にノーフォーク公爵位を得て、ハワード家は貴族としての地位を確立しました。

しかし、初代ノーフォーク公ジョンは、リチャード3世と共にボズワースの戦いで戦死。その後、二代目ノーフォーク公となったトマスは、フロドゥンの戦いでの功績により、爵位を回復しました。さらに、三代目ノーフォーク公トマスは、姪をヘンリー8世の王妃としたことで、宮廷内で大きな権力を握りました。しかし、ヘンリー8世の怒りを買い、処刑されそうになるも、メアリー1世の即位に貢献したことで、爵位を回復しています。

その後、四代目ノーフォーク公トマスは、名門貴族との婚姻を重ねましたが、スコットランド女王メアリーとの結婚計画がエリザベス1世の警戒を招き、処刑されました。これにより、ハワード家は一時的にノーフォーク公爵位を失いましたが、三代後の1660年に、アランデル伯爵家を継承したハワード家嫡流が、五代目ノーフォーク公爵位を回復しました。以降、ノーフォーク公爵位は、ハワード家嫡流によって世襲され続けています。

特筆すべきは、ハワード家が代々カトリックを信仰していたことです。そのため、16世紀後半から19世紀のカトリック解放法成立まで、政治の中枢から排除され、宗教的な迫害も受けました。第20代アランデル伯爵フィリップ・ハワードは、カトリック信仰を捨てなかったため、獄死。初代スタッフォード子爵ウィリアム・ハワードも、カトリック陰謀事件に関与したとして処刑されています。このような苦難の歴史を経て、ハワード家は現在に至っています。

分流

ハワード家には、複数の分流が存在し、エフィンガム伯爵家、サフォーク伯爵家、カーライル伯爵家、ペンリスのハワード男爵家が、現在も爵位を保持しています。特に、サフォーク伯爵家とカーライル伯爵家はプロテスタントであるため、カトリックである本家当主が職務を執れない際に、紋章院総裁の職務を代行することがありました。

エフィンガム伯爵家: 二代目ノーフォーク公の次男を祖とする家系で、アルマダの海戦の英雄、初代ノッティンガム伯爵チャールズ・ハワードを輩出しました。
サフォーク伯爵家: 四代目ノーフォーク公の次男を祖とし、現在まで21代続いています。
カーライル伯爵家: 四代目ノーフォーク公の三男の曾孫を祖とし、現在まで13代続いています。ヨークシャーにあるハワード城は、カーライル伯爵家によって建造された、イギリスで最も壮麗な邸宅の一つです。
ペンリスのハワード男爵家: 12代ノーフォーク公の弟の孫を祖とし、現在3代目です。

ハワード家の系図

ハワード家の系図は複雑であり、各家系が密接に関連しています。ノーフォーク公爵家、エフィンガム伯爵家、サフォーク伯爵家、カーライル伯爵家のそれぞれの系図は、ハワード家の歴史を理解する上で重要な要素です。

まとめ

ハワード家は、イギリス貴族社会において、重要な役割を果たしてきた名門です。その歴史は、政治的、宗教的な動乱の中で、繁栄と没落を繰り返してきました。現在も、ハワード家はイギリス社会において、その存在感を示し続けています。

参考文献

海保眞夫『イギリスの大貴族』平凡社、1999年
森護『英国の貴族 遅れてきた公爵』大修館書店、1987年
* 松村赳、富田虎男『英米史辞典』研究社、2000年

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