ストーン・ジョンソン

ストーン・ジョンソン（Stonewall Edward Johnson、1940年 4月26日 - 1963年 9月8日）は、アメリカ合衆国が生んだ稀有なアスリートであり、陸上競技の短距離走者として輝かしい才能を発揮し、その後アメリカンフットボール選手としても期待されながらも、短い生涯を駆け抜けた人物です。特に1960年代初頭において、陸上トラックとフットボールフィールドの両方でその身体能力の高さを示しました。

陸上競技での飛躍

ルイジアナ州にあるグランブリング州立大学に在籍していた1960年、ジョンソンは陸上競技選手としてその名を全国に知らしめます。この年に行われたローマオリンピックのアメリカ国内最終選考会において、彼は男子200メートル走の準決勝で驚異的なタイムを叩き出しました。それは当時の世界記録と並ぶ20秒5という記録であり、彼のスプリンターとしての突出した実力を証明しました。この記録は、電気計時が主流となる以前のハンドタイム計測における歴史的な記録の一つとして記憶されています。選考会の決勝レースでは、レイ・ノートンに続く2位という成績を収め、見事ローマオリンピックのアメリカ代表チーム入りを果たしました。

ローマの舞台で、ジョンソンは200メートル走と4×100メートルリレーの二種目に出場しました。個人種目である200メートル走では、世界の強豪たちと競い合い、決勝まで駒を進め5位に入賞するという健闘を見せました。一方、4×100メートルリレーでは、第3走者としてチームの一員となり、決勝へと進出しました。アメリカ代表チームは決勝で39秒60という電気計時での速いタイムを記録し、トラック上では1着でフィニッシュしました。しかし、後に第1走者から第2走者へのバトンパスが規定のリレーゾーンを逸脱していたことが判明し、残念ながらチームは失格処分となってしまいました。この一件は、彼のオリンピックにおけるリレーのメダル獲得の機会を奪う結果となりました。

オリンピックイヤーである1960年には、NCAA（全米大学体育協会）主催の陸上競技大会においても、200メートル走で2位となるなど、大学レベルでもトップアスリートとしての地位を確立していました。

アメリカンフットボールへの転向、そして悲運

陸上競技での輝かしい実績を持つジョンソンは、その後アメリカンフットボールの世界へと足を踏み入れます。1963年、彼はAFL（アメリカン・フットボール・リーグ）のカンザスシティ・チーフスにランニングバックとして入団しました。プロフットボール選手としてのキャリアをスタートさせたばかりの彼には、そのスプリント能力を生かした活躍が期待されていました。

しかし、運命は残酷な形で彼のキャリアを、そして人生を断ち切りました。1963年 8月30日に開催されたオークランド・レイダースとのプレシーズンマッチに出場した際、試合中の不慮の事故により頚椎を重傷を負ってしまったのです。懸命な治療が行われたものの、その傷は深く、彼は事故からわずか数日後の同年9月8日に帰らぬ人となりました。

ストーン・ジョンソンは、プロのAFL公式戦でプレーする機会を得ることなく、その短い生涯を終えました。しかし、彼の将来への期待、そしてチームメイトやファンに与えた影響は計り知れないものがありました。その追悼と栄誉を称え、カンザスシティ・チーフスは彼の背番号である33番を永久欠番とすることを決定しました。公式戦出場歴がない選手の背番号が永久欠番となるのは極めて異例であり、これはジョンソンがいかに期待され、その死がチームにとって大きな喪失であったかを物語っています。

ストーン・ジョンソンの人生はわずか23年という短いものでしたが、陸上選手として世界の舞台で戦い、世界記録に並ぶタイムを記録し、そしてアメリカンフットボール選手としてプロの世界に足を踏み入れた、まさに二刀流の可能性を秘めたアスリートでした。彼の早すぎる死は多くの人々に衝撃を与えましたが、永久欠番となった背番号33番は、カンザスシティ・チーフスの歴史の中で、そして彼のことを知る人々の記憶の中で、今もなお彼の存在を語り継いでいます。

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