スナックママ連続殺人事件

スナックママ連続殺人事件

1991年12月、兵庫県、島根県、京都府で発生した連続殺人事件。男N（当時35歳）は、スナック経営者の女性4人を相次いで殺害し、金品を奪った。Nは過去に殺人を犯し服役した経歴を持っていた。

事件は、Nがスナックの客を装い、女性経営者と二人きりになったところで犯行に及ぶという手口で、一連の犯行はわずか2週間ほどの間に集中して発生した。また、逮捕直前には女性落語家への強盗殺人未遂事件も起こしている。これらの犯行により、警察庁は広域重要指定119号事件として捜査を強化した。

Nは1992年1月に大阪で逮捕され、2005年に死刑が確定。2017年に大阪拘置所で死刑が執行された。

加害者Nの生い立ち

Nは1956年1月14日、鳥取県鳥取市で生まれた。幼少期は貧困な家庭環境で育ち、父親は出稼ぎ、母親は病気がちだった。満足な食事もできず、学校にもほとんど通えなかった。読み書きもできなかった。

中学校ではいじめに遭い、万引きやいたずらを繰り返したため、教護院に収容された。その後、溶接工などの職を転々とするも長続きせず、窃盗事件を起こし少年院へ送致された。少年院を出所後は暴力団と関わり、盗みを繰り返していた。

殺人前科

1974年、18歳の時にスナック経営者の女性を殺害し、懲役刑に処された。出所後も窃盗や強盗事件を起こし、刑務所と社会を往復する生活を送っていた。

事件の経緯

1991年10月、刑務所を出所したNは暴力団組員を頼り身を寄せたが、その後、倉敷市のスナックで女性経営者を襲撃、組員の妻を脅すなどの事件を起こし、組から追われる身となる。

逃亡中の12月12日、兵庫県姫路市のスナックで女性経営者を殺害（A事件）。その後、島根県松江市のスナックで女性経営者を殺害（B事件）。12月26日未明には、京都市内のスナックで女性経営者を殺害（C事件）。さらに28日朝、同じく京都市内のスナックで女性経営者を殺害（D事件）した。

これらの犯行はいずれも、スナックの客を装って入店し、女性経営者と二人きりになったところで襲撃するというもので、短期間のうちに連続して発生した。Nは犯行時に黒いジャンパーを着用し、下見や逃走時には明るい色のジャンパーに着替えるなど、計画的な犯行であったことがうかがえる。

逮捕と裁判

1992年1月5日、逃走中のNは大阪市天王寺区のアパートに侵入し、女性落語家・桂花枝を襲い、現金を奪った。この事件をきっかけに指名手配され、1月7日に逮捕された。

裁判では、Nは4件の殺人について全面否認を続けたが、状況証拠や自白の信用性から連続犯行と認定され、1995年に死刑判決が言い渡された。その後、控訴審、上告審でも死刑判決が支持され、2005年に死刑が確定した。

死刑執行とその後

死刑確定後も、Nは再審請求を繰り返したが、2017年7月13日に大阪拘置所で死刑が執行された。再審請求中の死刑囚への死刑執行は異例だったが、法務大臣は「再審請求が棄却されることが確実である場合は死刑執行もやむを得ない」と説明した。

事件の背景と考察

この事件は、Nの幼少期の貧困や家庭環境が大きく影響していると指摘されている。また、矯正施設の在り方や更生プログラムについても疑問が呈され、Nが犯行を繰り返す背景には、刑務所での矯正教育が十分でなかったのではないかという意見も出た。

精神科医はNの犯行を快楽殺人ではないかと指摘し、母親を早くに亡くしたNが、年上の女性に執着していた可能性を示唆している。また、Nは幼少期の心の傷から母性愛への渇望を癒そうとしていたのではないかという意見も出ている。

この事件は、社会における貧困や家庭環境の重要性、そして犯罪者の更生について深く考えさせる事件となった。

参考文献

最高裁判所第三小法廷判決 2005年（平成17年）6月7日
『命の灯を消さないで 死刑囚からあなたへ』インパクト出版会、2009年
『死刑囚90人 とどきますか、獄中からの声』インパクト出版会、2012年
『年報・死刑廃止』シリーズ（インパクト出版会）

関連項目

連続殺人
大阪姉妹殺害事件
* マブチモーター社長宅殺人放火事件

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