スネクマ M88

スネクマ M88 ターボファンエンジン：ラファール戦闘機の心臓部

M88は、フランスのスネクマ（現サフラン・エアクラフト・エンジンズ）社が開発したアフターバーナー付きターボファンエンジンです。ダッソー ラファール戦闘機のために設計され、その高い性能と信頼性でラファールの戦闘能力を支えています。

設計と開発

M88エンジンの開発は、高度な技術を導入しつつ、コンパクトで整備性の高いエンジンを目指して進められました。原型であるM88-1は技術実証エンジンとして、RB199エンジンと同等の技術レベルを目標としました。量産型のM88-2は、ラファールの要求仕様に合わせて最適化され、同時期に開発されたユーロファイター タイフーンのEJ200エンジンと競合する性能を備えています。

M88は、可変式ファン案内翼、6段高圧圧縮機、イジェクタ型排気ノズルといった特徴的な設計を採用しています。将来的な構想として、推力偏向ノズルの導入も検討されています。また、ラファールの機体サイズに合わせて、全長140インチ以内、乾燥重量2,000ポンド以内に収まるようにコンパクト化されています。

最先端技術も積極的に導入されており、単結晶高圧タービンブレード、粉末金属焼結ディスク、全般デジタルエンジン制御などが採用されています。ステルス性にも配慮し、電磁波や赤外線シグネチャを低減する設計が施されています。整備性の高さもM88の大きな特徴であり、21のモジュールで構成され、互換性を維持した状態で交換が可能です。

性能

M88-2エンジンの推力は、ドライ状態で50kN、アフターバーナー使用時には75kNを発揮します。これにより、ラファールは優れた加速性能と機動性を実現しています。

派生型

M88エンジンには、様々な派生型が存在します。

M88-1: 技術実証エンジン
M88-2: 最初の量産型。ラファールの初期型に搭載。
M88-2E4: 寿命を延ばした改良型。エンジン部品の耐久性を向上させ、燃料消費量を削減。
M88-3: 輸出用の改良型として検討されたモデル。推力向上と燃料消費量の最適化が図られました。
M88-4E (M88 Pack CGP): TCO（総保有コスト）プログラムを適用した改良型。部品の改良により耐久性を高め、運用コストを低減。
M88-X (M88-9): アラブ首長国連邦への輸出計画に向けて開発が検討されている改良型。推力9トンを目指し、低圧圧縮機の大型化などが計画されています。

搭載機

M88エンジンは、主にダッソー ラファール戦闘機に搭載されています。また、旧ユーゴスラビアで計画されていたノヴィ・アヴィオン戦闘機にも搭載される予定でした。一時期は、サーブ 39 グリペンの輸出用代替エンジンとして提案されたこともあります。

スペック

形式: 2軸ターボファン
全長: 3,531 mm
直径: 69.6 cm (内径)
乾燥重量: 897 kg
圧縮機: 3段低圧・6段高圧圧縮機
バイパス比: 0.30:1
燃焼器: アニュラー型
タービン: 1段低圧・1段高圧タービン
推力: 50.04 kN (ミリタリー推力), 75.62 kN (アフターバーナー使用時)
全圧縮比: 24.5:1
タービン入口温度: 1,850K
推力重量比: 5.7:1 (ドライ), 8.5:1 (アフターバーナー)

まとめ

M88エンジンは、ラファール戦闘機の性能を最大限に引き出すために開発された高性能エンジンです。そのコンパクトな設計、高度な技術、そして優れた整備性は、ラファールの運用を支える重要な要素となっています。今後も、M88エンジンの改良は続けられ、ラファールの能力向上に貢献していくことが期待されます。

もう一度検索