スネ・ベリストローム

スネ・カール・ベリストローム（Sune Karl Bergström、1916年1月10日生まれ、2004年8月15日没）は、20世紀を代表するスウェーデンの生化学者です。彼は体内で多様な生理作用を持つ重要な物質群であるプロスタグランジンの発見とその詳細な研究を通じて、現代医学に多大な貢献をしました。この功績により、彼は1982年にノーベル生理学・医学賞を共同受賞しています。

ベリストロームはストックホルムに生まれ、カロリンスカ研究所で医学と化学を修めました。学生時代から脂質やステロイドに関する研究に深く携わり、1943年には博士号（Ph.D.）を取得しました。その後、彼は国際的な視野を広げるため、ロンドン大学やコロンビア大学で研究員として研鑽を積みました。

スウェーデン帰国後、ベリストロームは1947年にルンド大学の生化学教授に就任し、研究と教育の第一線で活躍しました。1957年には母校であるカロリンスカ研究所の生化学教授に移り、さらにその研究室はプロスタグランジン研究の世界的な中心地となっていきました。彼は同僚のベンクト・サミュエルソンや英国のジョン・ベーンらと共に、プロスタグランジンが体内でどのように生成され、炎症、血液凝固、平滑筋の収縮といった生理機能にどのように関わっているのかを解明しました。これらの研究成果は、後にアスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬（NSAID）の作用機序理解にも繋がる画期的なものでした。

ベリストロームの活躍は研究室内に留まりませんでした。彼はスウェーデン科学界の重鎮として、数々の要職を歴任しました。1965年にはスウェーデン王立科学アカデミーの会員に選ばれ、1983年にはその会長を務めました。また、1975年から1987年までの長きにわたり、ノーベル財団の理事長を務め、ノーベル賞の選考や運営においても重要な役割を果たしました。彼の指導力は、スウェーデンの科学研究全体の発展にも寄与したと言えるでしょう。

私生活においては、生物学者であり、2022年にノーベル生理学・医学賞を受賞したスバンテ・ペーボは、ベリストロームの婚外子として知られています。親子二代でのノーベル賞受賞は、極めて稀な事例として注目されました。

その卓越した研究と科学界への貢献に対し、ベリストロームはノーベル賞以外にも数多くの栄誉を受けています。主なものには、ガードナー国際賞（1972年）、ルイザ・グロス・ホロウィッツ賞（1975年）、アルバート・ラスカー基礎医学研究賞（1977年）、ウェルチ化学賞（1980年）、そしてベンジャミン・フランクリン・メダル（1988年）などがあります。

スネ・カール・ベリストロームは、プロスタグランジンという生理活性物質の重要性を世界に知らしめ、その後の医学研究に計り知れない影響を与えました。研究者としてだけでなく、科学組織のリーダーとしても多大な功績を残した、20世紀を代表する科学者の一人です。

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