プロスタグランジン

プロスタグランジン (Prostaglandin)

プロスタグランジン（PG）は、エイコサノイドの一種で、プロスタン酸骨格を有する生理活性物質群です。これは細胞内で合成され、ホルモンのように体内の様々な生理的過程に関与します。特にアラキドン酸から作られ、プロスタグランジンとトロンボキサンを合わせてプロスタノイドと呼ばれています。

発見の歴史

プロスタグランジンは1933年にモーリス・ウォルター・ゴールドブラットによって、ヒトの精液中に存在することが発見されました。その翌年にはウルフ・スファンテ・フォン・オイラーが羊の精嚢腺から、平滑筋を収縮させる物質を特定しました。1936年には初めて精液から単離され、当初は前立腺由来と考えられたことから名前が付けられました。

化学構造

プロスタグランジン類の化学構造は基本骨格としてプロスタン酸を共通にもつ一連の化合物です。これらはその五員環に結合する官能基や二重結合の有無によってA群からJ群まで区分され、側鎖の二重結合の数によって1-3群に分類されます。たとえば、PGE1は五員環の9位にオキソ基、11位にヒドロキシル基、側鎖に一つの二重結合を持つなど特定の構造を持っています。

合成過程

プロスタグランジンは人間のさまざまな組織で合成されます。まず、ホスホリパーゼA2によって細胞内のアラキドン酸が遊離し、その後シクロオキシゲナーゼ（COX）が関与します。この過程でプロスタグランジンG2（PGG2）が生成され、その後プロスタグランジンやトロンボキサンが合成されます。さらに、リポキシゲナーゼによってロイコトリエンが合成されることもあります。1969年にはコーリーがプロスタグランジン類の全合成に成功しました。

非ステロイド性抗炎症薬（NSAIDs）は、シクロオキシゲナーゼの活性を阻害し、アラキドン酸からのPGH2合成を妨げることでプロスタグランジンとトロンボキサンの産生を減少させます。アスピリンの抗炎症作用もこのメカニズムによるものです。

プロスタグランジンの種類とその作用

プロスタグランジンは多くの種類があり、それぞれ特有の生理作用を持ちます。以下は主な種類と作用です：

- PGA、PGB、PGC：すべて血圧低下作用のみを持つ。
- PGD2：血小板の凝集を促進し、睡眠を誘発します。
- PGE1：動脈管を開き、子宮を収縮させる作用があります。
- PGE2：平滑筋収縮作用、末梢血管の拡張、発熱や痛覚の増強、骨生成と吸収に関与します。
- PGF2α：子宮や気管支、血管の平滑筋を収縮させる作用を持ち、繁殖の分野で重要です。
- PGG：血圧を下げ、血小板の凝集を促進し、眼圧を下げます。
- PGH2：血小板の凝集に役立ちます。
- PGI2：血管を拡張し、血小板の合成を阻害します。
- PGJ：抗腫瘍効果があることが知られています。

これらのプロスタグランジンは、人体の生理機能の調節に不可欠な役割を果たしており、さまざまな病理状態での治療ターゲットとしても重要視されています。

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