スハルト

スハルトの歴史と影響

スハルト（Haji Muhammad Soeharto）は、インドネシアの軍人であり政治家で、1921年6月8日にジャワ州のゴデアン村に生まれました。彼は1968年から1998年までの30年以上にわたりインドネシアの第2代大統領を務め、開発独裁政権として知られる政治体制を築きました。

初期の経歴

スハルトは、農家の子として生まれ、両親の離婚後に様々な場所で育ちました。若い頃から軍に入隊し、太平洋戦争中、日本軍によって組織された郷土防衛義勇軍に参加しました。日本の降伏後、スハルトはインドネシア独立戦争において重要な役割を果たし、軍での実績を積んでいきました。

9月30日事件と権力掌握

1965年、スハルトはスカルノ大統領の下で急進的な共産主義的動きに対抗する形で急報連隊を組織し、同年9月30日には親共派によるクーデター事件が発生します。この事件を受けて、スハルトはスカルノから権限を委譲され、その後、軍事政権を樹立しました。彼は共産党に対して大規模な弾圧を行い、多くの人々が殺害されました。この大虐殺は20世紀で最も惨劇的な事件の一つとされています。

大統領としての政策

スハルトの政権は、親米的な外交政策を展開し、インドネシアを国連に復帰させるなど国際的地位を回復しました。また、彼は東南アジア諸国連合（ASEAN）の設立にも寄与し、近隣諸国との関係を強化しました。しかし、彼の政府は強権的で、民主的な運営には限界がありました。

政権の腐敗と人権問題

スハルト政権下では、権力者とその身内への利権配分が横行し、汚職が蔓延しました。特に、スハルトの妻は「マダム・ティエン・パーセント」と呼ばれるほど、商人へのリベート要求が問題視されました。また、スハルト自身は多くの人権侵害を行い、民主化運動の弾圧も行われました。

終焉とその後

1997年に発生したアジア通貨危機は、インドネシア経済に深刻な影響を与え、国民の不満が高まりました。1998年には大規模な反政府デモが発生し、スハルトは最終的に辞任を余儀なくされます。その後、スハルト一族や彼に近しい人物は汚職で逮捕され、スハルト自身も法的手続きに直面しましたが、高齢や健康問題を理由に追訴されませんでした。

スハルトは2008年1月27日に亡くなり、86歳の生涯を閉じました。彼の死後も、政権時代の遺産と影響はインドネシア社会の中でさまざまな形で残り続けています。

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