スパサテル・ワシリー・ベフ (曳船)

スパサテル・ワシリー・ベフ（SB-739）について

「スパサテル・ワシリー・ベフ」（SB-739）は、ロシア海軍が運用していたプロジェクト22870型救助曳船です。この船は、遭難した船舶の曳航、海上での消火活動、他の船舶への水や電力の供給、負傷者の避難、そして潜水救助プラットフォームとしての多岐にわたる任務を遂行するために建造されました。乗員は26名で、さらに36名の収容が可能でした。

船体と性能

全長は57メートル、幅は14メートルで、喫水は3.2メートルです。基準排水量は1200トン、満載時には1670トンに達します。最大速度は時速26キロメートル（14ノット）で、最大20日間の自律航行が可能です。推進システムには、2つのアジポッドと2つのバウスラスターが採用されており、これらは合計出力5,160kWの7基のディーゼル発電機から供給される2基の2030kW電気モーターによって駆動されます。この高度な推進システムにより、優れた操縦性と安定した航行を可能にしていました。

建造と配備

「ワシリー・ベフ」は、ヴィンペル設計局が設計を担当し、ニジニ・ノヴゴロドで設計されました。建造はアストラハンのZvezdochka造船所で行われ、当初はSB-739という名称で起工されました。2016年8月2日に進水し、2017年1月16日にロシア海軍に就役、同月後半には海上公試を完了しました。2017年3月には、黒海艦隊に配備されたプロジェクト22870型曳船4隻のうちの1隻（他に「プロフェッサー・ニコライ・ムール」「キャプテン・グリエフ」「SB-742」）として、第145救助船支隊に配属されました。2021年4月19日には、黒海艦隊の救助部門のチーフエンジニアにちなんで「スパサテル・ワシリー・ベフ」と命名されました。

沈没

「スパサテル・ワシリー・ベフ」は、2022年6月17日に黒海に浮かぶロシアが支配するズミイヌイ島への補給任務中に悲劇に見舞われました。この日、ウクライナ国防省は、戦闘ドローン「バイラクタルTB2」が撮影したとされる「ワシリー・ベフ」への攻撃映像を公開しました。映像では、対艦ミサイルが2発立て続けに命中する様子が捉えられており、これにより同船は沈没に至りました。ロシア側からの初期の報告では、乗船していた33名のうち23名が負傷、10名が行方不明とされています。その後、6月21日に英国防省は、ウクライナ軍が欧米から供与された対艦ミサイル「ハープーン」を使用して「ワシリー・ベフ」に損害を与えたことを明らかにしました。この攻撃により、「スパサテル・ワシリー・ベフ」は、その短い就役期間を終えることとなりました。

この沈没は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻における重要な出来事の一つであり、現代の海上戦におけるドローンと対艦ミサイルの有効性を改めて示す事例となりました。

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