海上公試

海上公試：船舶の最終テスト

海上公試とは、新造または改装された船舶が設計通りの性能を有しているかを確認するための、最終段階の性能試験です。一般的に「公試運転」や「公試」と略されることもあります。商船では数日間の試験で済むこともありますが、大型艦艇では数ヶ月にも及ぶ大規模な試験となる場合があり、延べ30日以上の海上公試を実施することも珍しくありません。公試後、最終的な艤装や塗装を行い、その後就役となります。

海上公試は、大きく分けて艦船公試と武器公試の2種類に分類されます。艦船公試は船体そのものの性能を確認する試験で、武器公試は搭載兵器の性能を確認する試験です。後者は軍艦などで実施されます。

艦船公試：船体性能の検証

艦船公試では、船舶の様々な性能を多角的に評価します。主な試験項目には以下のようなものがあります。

旋回試験: 船舶の旋回性能、操舵性などを評価します。
速力試験: エンジン出力を段階的に変化させ、船の速度を計測します。一定距離を直線航行し、風や潮流の影響を最小限にするため、同一区間を複数回往復して平均速度を求めます。現代ではGPS技術を活用し、航跡記録から速度を算出する手法が主流となっています。かつては、一定間隔で設置された標柱の間を航行し、その通過時間から速度を計算していました。
燃費計測: エンジン出力と速度、燃料消費量の関係を測定し、燃費効率を評価します。
クラッシュ・ストップ・アスターン試験: エンジンを全速前進から中立、全速後進と切り替え、急停止させる試験です。これは、緊急時に船を迅速に停止させるためのエンジンの性能を確認する重要な試験です。「クラッシュ」は、エンジンに大きな負荷がかかることを意味し、「アスターン」は船尾を意味する英語「stern」に由来する航海用語で、後進を意味します。
各種計器テスト: 羅針儀、測深儀、GPSなど、船舶に搭載されている様々な計器の精度と作動状況を確認します。

武器公試：搭載兵器の性能確認

武器公試は軍艦など、兵器を搭載する船舶に対して行われます。試験内容は搭載されている兵器の種類によって異なりますが、例として日本海軍における「兵装公試」の項目を挙げると以下の通りです。

砲熕兵装公試: 各種砲熕兵器の発射精度、射程、信頼性などを確認します。
発煙兵装公試: 発煙装置の作動状況、発煙量などを確認します。
光学兵装公試: 潜望鏡、測距儀などの光学機器の精度と性能を確認します。
魚雷兵装公試: 魚雷発射管、空気圧縮ポンプなどの性能と信頼性を確認します。
機雷兵装公試: 機雷敷設装置、妨掃具敷設装置などの性能と信頼性を確認します。
掃海兵装公試: 掃海具曳航装置、防雷具敷設装置などの性能と信頼性を確認します。
対潜兵装公試: 深度爆雷投射機などの性能と信頼性を確認します。
水中測的兵装公試: 探信儀、水中聴音機などの性能と信頼性を確認します。
航海兵装公試: 羅針儀、航跡自画装置などの性能と信頼性を確認します。
無線兵装公試: 送信機、受信機などの性能と信頼性を確認します。
電気兵装公試: 発電機、探照燈などの性能と信頼性を確認します。
* 航空兵装公試: 射出機、艦載機着艦装置などの性能と信頼性を確認します。

このように、海上公試は船舶の安全運航と戦闘能力（軍艦の場合）を確保するために非常に重要なプロセスです。多岐にわたる試験項目をクリアすることで、初めて船舶は正式に就役となります。

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