スピノサスモモ

スピノサスモモ（Prunus spinosa）

スピノサスモモは、バラ科スモモ属の低木、または小高木であり、ヨーロッパ、西アジア、北アフリカに自生しています。濃紫色のスローと呼ばれる果実をつけ、様々な用途に利用されています。

語源

種小名 spinosa はラテン語で「トゲ状」を意味し、英名 blackthorn は黒い樹皮とトゲに由来すると言われています。果実の英名 sloe は、古英語の slāh から来ており、ドイツ語の Schlehe など、ゲルマン語派の各言語に同源語が見られます。

和名

スピノサスモモという和訳名が、学術論文や政府の報告書などで確認できます。blackthorn は慣習的に「リンボク（の一種）」と訳されることがありますが、リンボク（Prunus spinulosa）は日本原産の別種です。また、トゲスモモと訳されることもあります。

利用

食用

果実は小さいスモモに似ており、保存食として利用されます。ヨーロッパでは、凍らせて酸味を和らげてから食用とされます。アルプスで発見されたアイスマンの遺体現場からも、一果が発見されています。

イギリスでは、この実を使ってスロー・ジンというリキュールが作られます。スペインのナバラ州では、スローを使ってパチャランという果実酒が作られています。また、ジャムや酢漬けとしても利用されます。

20世紀前半頃まで、ジュースが偽造ポートワインに使用されたり、19世紀末頃まで葉が不正に紅茶に混入されたりすることもありました。

木材

アイルランドでは伝統的に、まっすぐ伸びたスピノサスモモの幹が杖や棍棒に使われます。王立アイルランド連隊の士官は、スピノサスモモの杖を持つのが伝統となっています。

燃料

煙が少なく、ゆっくり燃えることから、薪としても重宝されました。

インク、染料

中世のユダヤ教学者ラシが、樹液をインクとして使用しました。果汁は赤みがかっていますが、染めると長持ちするペールブルーとなります。

牧畜

生垣や野鳥猟用の茂みとしても植えられますが、スピノサスモモの藪は家畜類の小さな傷の原因となることもあります。

生態系

葉はチョウ目の幼虫（例：チョウセンメスアカシジミ）の餌となります。

スピノサスモモは、食用、木材、燃料、染料など、多岐にわたる用途で利用されてきた植物です。また、生態系においても重要な役割を果たしています。

関連項目

スモモ属
スロー・ジン
* パチャラン

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