樹液

樹液とは

樹液は、植物の木部細胞や篩部師管要素を通って輸送される液体のことです。これは、植物が成長し、生命を維持するために不可欠な役割を果たしています。樹液は、単なる水ではなく、植物が必要とする様々な物質を含んでいます。この樹液は、植物全体に栄養素を運搬し、植物の成長や生理活動を支えています。また、樹液はラテックスや樹脂、細胞液とは異なり、組成や機能も異なります。

樹液の種類

樹液は、主に2種類に分けられます。

木部樹液

木部樹液は、主に水とミネラル、ホルモンなどの栄養素を含む水溶液です。根から吸収された水分と栄養は、木部を通って葉へと運ばれます。この流れは、一般的に下から上へと一方通行です。

木部樹液の輸送メカニズムについては、長年議論されてきましたが、現在では「凝集力-張力理論」が最も有力な説として受け入れられています。この理論は、葉からの蒸散によって生じる張力によって、水が根から吸い上げられるというものです。しかし、他の説も存在し、複数の要因が複合的に作用しているという考え方も提案されています。

木部樹液の輸送は、キャビテーションという現象によって阻害されることがあります。キャビテーションとは、液体の圧力が低下することで気泡が発生し、木部の導管を塞いでしまう現象です。

篩部樹液

篩部樹液は、主に糖、ホルモン、ミネラルなどの水溶液です。葉で光合成によって作られた糖は、篩部を通って植物の各部位へと運ばれます。この流れは、糖が作られる場所から使われる場所へと移動します。

篩部樹液の輸送メカニズムについては、エルンスト・ミュンヒによる圧流説が一般的です。これは、篩部細胞内の有機物濃度の差によって浸透圧が生じ、物質が移動するというものです。しかし、他の仮説も提唱されており、輸送メカニズムはまだ完全に解明されていません。

篩部樹液は、植物体内での情報伝達にも関わっていると考えられています。植物は、篩部樹液を通して、様々な信号をやり取りしているのです。

昆虫と樹液

カメムシ目の昆虫は、篩部樹液を直接摂取して生きています。篩部樹液は、他の植物生産物と比較して栄養価が高く、毒素や摂食抑制物質を含まないため、一部の昆虫にとっては重要な食物源です。しかし、篩部樹液は消化しにくいため、直接利用できる動物は限られています。

カメムシ目の昆虫は、樹液中の非必須アミノ酸と必須アミノ酸の比率が高いことに適応しており、体内の共生微生物から必須アミノ酸を得ています。また、高濃度の糖に対応するために、腸内でスクラーゼという酵素を用いて糖を分解しています。

一方で、篩部樹液を直接摂取しない多くの動物は、カメムシ目の昆虫が分泌する甘露を通じて、間接的に篩部樹液を摂取しています。甘露は篩部樹液よりもアミノ酸比率や浸透圧が低いため、動物にとってより消化しやすい状態になっています。

ヒトと樹液

樹液は、人間にとっても利用価値の高い資源です。

メープルシロップは、サトウカエデの木部樹液から作られます。この樹液は、春先に収穫され、煮詰めることでシロップになります。

また、シラカバの樹液（バーチサップ）は、早春に収穫され、生のまま飲用したり、発酵させて利用されます。バーチサップには、キシリトールが含まれています。

特定のヤシの木の樹液からは、パームシロップを作ることができます。カナリア諸島やチリでは、それぞれのヤシの木からシロップが作られています。

まとめ

樹液は、植物の生命活動に不可欠な液体であり、その種類や役割は多岐にわたります。植物だけでなく、昆虫や人間にとっても重要な資源であり、私たちの生活に深く関わっています。

関連項目

w:Guttation
ラテックス
* 天然樹脂

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