スピーカー (コンピュータ)

PC内蔵スピーカーの解説

パーソナルコンピュータ（PC）において、音を発生させるスピーカーは様々な形態で存在します。ここでは、サウンドカードの出力とは異なり、PCの自己診断結果やシステム警告音を発生させるための内蔵スピーカーに焦点を当てて解説します。

IBM PCおよび互換機のスピーカーインターフェース

IBM PCでは、スピーカーはマザーボードのフロントパネル接続端子にある4ピンコネクタ（中央2ピン抜き）に直接接続されていました。このインターフェースはIBM PC互換機にも継承され、長らく利用されてきました。近年では、マザーボードに圧電スピーカーを直接配置する設計も見られます。しかし、電源ランプやマザーボード上の自己診断LEDでPOSTコードを確認できるため、内蔵スピーカーを廃止した製品も少なくありません。

このスピーカーインターフェースは、+5V電源に直結されており、電源のオンオフによって発音します。音量や周波数は、PCが行う変調（PWM）によって制御されるため、製品やOSによって異なります。このインターフェースは、現在でもレガシーデバイスとして存在し続けている珍しい例です。

セルフテスト結果の報告

PCの起動時に、マザーボードのBIOSはシステム全体の簡易的な自己診断（POST）を行います。異常が検出された場合、IBM PCではスピーカーから特定のパターン音を発することでユーザーに警告していました。この音のパターンによって、どのようなエラーが発生したのかをある程度特定できました。

内蔵スピーカー利用法の変遷

内蔵スピーカーは、当初は警告音の発生が主な役割でしたが、古いゲームソフトでは矩形波による音楽や効果音の再生にも利用されました。CPUの演算能力が向上するにつれて、PWMを使ってサイン波を近似するアナログ的な発音も可能になり、表現力は進化しました。

しかし、国産パソコンではスピーカーを直接接続せず、駆動回路を内蔵したブザーを接続していたため、音楽再生の品質は低く、アナログ再生には不向きでした。そのため、日本のPCでは代替としてプログラマブルシンセサイザー音源（PSG音源）を搭載し、音楽再生能力を向上させました。

内蔵スピーカーは、サウンドカードの普及やマザーボードへのサウンド機能標準搭載によって、その役割は大きく変化しました。発音源は外部スピーカーを前提としたAC'97やHD Audioへと移行し、内蔵スピーカーの利用頻度は大幅に減少しました。サウンドカードが高価だった時代には、内蔵スピーカーからサウンドを出力するためのサウンドカード互換デバイスドライバーも提供されていました。


このように、PC内蔵スピーカーは、その初期から現代に至るまで、様々な形で利用されてきました。技術の進歩と共に役割を変えながら、PCの基本的な機能の一部として存在し続けています。

もう一度検索