スピーク・ナウ (テイラーズ・ヴァージョン)

『スピーク・ナウ (テイラーズ・ヴァージョン)』（英: Speak Now (Taylor's Version)）は、アメリカ合衆国のシンガーソングライター、テイラー・スウィフトによって制作された、通算3作目となる再録音版のスタジオアルバムです。2023年7月7日にリパブリック・レコードから発表されました。

本作は、2010年にリリースされたスウィフトにとって3枚目のオリジナル・スタジオアルバム『スピーク・ナウ』を新たにレコーディングし直した作品です。これは、彼女が自身の初期アルバムの原盤権を取り戻す目的で行っているプロジェクトの一環であり、先行して2021年には『フィアレス (テイラーズ・ヴァージョン)』と『レッド (テイラーズ・ヴァージョン)』がリリースされています。アルバムのリリースは、2023年に世界各地で開催された大規模ツアー「The Eras Tour」の中で正式に発表されました。

収録曲と構成

この再録音版アルバムには、オリジナル版『スピーク・ナウ』に収録されていた全楽曲に加え、「フロム・ザ・ヴォルト（From the Vault）」と銘打たれた6曲の未発表音源が追加収録されています。未発表曲の中には、フォール・アウト・ボーイやパラモアのボーカリストであるヘイリー・ウィリアムスといった著名なアーティストがゲスト参加した楽曲も含まれています。

アルバムに収録されている全ての曲のタイトルには、原盤権がアーティスト自身にあることを示す「(Taylor's Version)」という括弧書きが付記されています。さらに、17曲目から22曲目までの「フロム・ザ・ヴォルト」楽曲には、「(From the Vault)」という表記も追加されています。

物理メディアとしては、CD2枚組でリリースされており、Disc 1にはオリジナル版の収録曲にあたる1曲目から16曲目までが、Disc 2には追加された17曲目から22曲目までの「フロム・ザ・ヴォルト」楽曲がそれぞれ収録されています。

商業的成功と記録

本作はリリース直後から大きな商業的成功を収め、数々の記録を樹立しました。

- ストリーミング記録: 世界最大の音楽ストリーミングサービスであるSpotifyでは、リリース初日に1億2,630万回を超えるストリーミング再生回数を記録しました。これは、2023年にリリースされたアルバムとしてはもちろん、カントリーアルバムとしても、それぞれ初日における過去最高の再生回数となりました。
- 全米チャート: アメリカの主要アルバムチャートであるビルボード200では、初登場から2週連続で首位を獲得しました。初週の販売枚数は40万枚を突破する大ヒットとなりました。

このアルバムの成功により、テイラー・スウィフトは以下のようなビルボードチャートの歴史的な記録を塗り替えました。

- 女性アーティスト最多首位記録: ビルボード200での首位獲得数が、女性アーティストとしては史上最多となりました。
- 同時チャートイン記録: トップ10内に同時に4枚のアルバムをチャートインさせた初の女性アーティストとなりました。また、ビルボード200に同時に11枚のアルバムがチャートインするという、女性アーティストおよび存命のソロアーティストとしては初の快挙を達成しました。
- ホット100全曲チャートイン: アルバムに収録された全22曲が、アメリカのシングルチャートであるビルボード・ホット100に初登場しました。これにより、彼女のキャリア全体におけるホット100へのエントリー総数は212曲となり、人気テレビシリーズ『Glee』のキャストによる記録を上回り、ドレイクに次ぐ歴代単独2位に浮上しました。
- カントリーチャート: トップ・カントリー・アルバムチャートでは、自身にとって8作目のナンバーワンアルバムとなりました。ホット・カントリー・ソングスチャートでも、アルバム収録曲全曲がチャートインし、そのうち7曲がトップ10入りを果たしました。

『スピーク・ナウ (テイラーズ・ヴァージョン)』は、単なる再録音盤に留まらず、テイラー・スウィフトがアーティストとしての権利を確立する運動の象徴であり、同時にその絶大な人気と影響力を改めて示す作品となりました。

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