スペースカデットキーボード

スペースカデットキーボードとは

スペースカデットキーボード（英: space-cadet keyboard）は、マサチューセッツ工科大学（MIT）が開発したLISPマシンに搭載されていた特異なキーボードです。1980年代にトム・ナイトによって設計され、当初はIncompatible Timesharing Systemで使用されていました。このキーボードは、計算機科学の分野で多くの用語や概念に影響を与えており、特にEmacsの設計において重要な役割を果たしています。

歴史的背景

トム・ナイトは自身の設計であるナイトキーボードを基に、スペースカデットキーボードを開発しました。MITのLISPマシンであるLM-2で使用されたこの鍵盤は、特に高度な操作が可能なことから他のキーボードとは一線を画しています。その後、シンボリックス社はこのキーボードの簡略版である「シンボリックスキーボード」を開発しながらも、スペースカデットの基本的レイアウトや修飾キーは保持されました。名前の「スペースカデット」は、宇宙飛行士候補生を意味し、数多くの操作キーがあることを象徴しています。

様々なキーと機能

スペースカデットキーボードには、7つの修飾キーが搭載されており、操作性を大幅に向上させています。具体的には、4つの制御キー（コントロール、メタ、スーパー、ハイパー）と3つのシフトキー（シフト、トップ、フロント）があります。特に、これらの修飾キーは横並びに配置されており、同時に複数のキーを押すことができるため、非常に柔軟な入力が可能です。たとえば、Ctrl、Meta、Hyper、Superのキーを同時に片手で押しながら、もう一方の手で別のキーを押すことができます。

このキーボードのほとんどのキーには三種類の文字が割り当てられており、シフトを使って切り替え可能です。キーの上面にはラテン文字と記号が、側面にはギリシャ文字が刻印され、たとえば「L」キーは上面に「L」と矢印、「λ」が側面にあります。特定の修飾キーとの組み合わせによって、スペースカデットキーボードで8000以上の異なる文字を入力することができます。これにより、複雑な数式や大量のコマンドを簡単に入力できます。

Emacsとの関係

多くのユーザーが、スペースカデットキーボードを活用してタイピング時間を短縮するために、さまざまなコマンドを記憶しました。このような習慣が、Emacsというテキストエディタのインターフェースを形成する一因となったのです。従来のキーボードとは違い、Emacsでは頻繁に修飾キーを使用するため、操作が簡便である一方で、スペースカデットキーボードの複雑さに追随していないとの意見もあります。実際、多くのユーザーは操作の煩雑さを指摘し、スペースカデットを基にしたEmacsの設計は過剰であると感じていました。

マクロ機能とその他の特徴

スペースカデットキーボードには、通常のキーに加え、特にマクロ機能がついている点が特徴的で、多くのアプリケーションがこの機能に対応しています。また、簡単な選択ができるように4つのローマ数字キー（I, II, III, IV）が用意されており、使い勝手が向上しています。

このように、スペースカデットキーボードは計算機科学の進展において重要な役割を果たし、そのユニークな設計は今なお多くの技術者やプログラマーに影響を与え続けています。

もう一度検索