スペースシャトル・エンタープライズ

スペースシャトル・エンタープライズ：幻の宇宙船

スペースシャトル・エンタープライズ（OV-101）は、アメリカ航空[[宇宙局]]（NASA）のスペースシャトル計画において、最初に製造されたオービターです。この機体は、宇宙へ飛び立つことはありませんでしたが、スペースシャトル計画の初期段階において重要な役割を担いました。

命名の経緯

エンタープライズは、当初「コンスティテューション（憲法）」と名付けられる予定でした。これは、アメリカ合衆国憲法発布200年を記念するものでした。しかし、SFドラマ『スタートレック』のファンから、宇宙船エンタープライズ号の名を付けてほしいという要望が殺到しました。このファンの熱意に動かされ、当時のジェラルド・R・フォード大統領が正式に「エンタープライズ」と命名しました。これは、NASAの歴史の中でも珍しい、一般の意見が採用された例と言えます。

滑空試験機としての役割

エンタープライズは、宇宙空間を飛行する目的で製造されたわけではありません。この機体は、スペースシャトルの滑空性能を試験するためのものでした。大気圏内での飛行試験を繰り返し、そのデータを基に、後のスペースシャトルの設計や運用に役立てられました。ファンの期待とは異なり、宇宙を飛行する「宇宙船エンタープライズ号」が誕生することはなかったのです。

宇宙飛行への期待と断念

エンタープライズは、滑空試験終了後、宇宙飛行が可能なように改装する計画がありました。しかし、その計画は実現せず、代わりにチャレンジャーが改装されることになりました。その後、チャレンジャーが悲劇的な事故で失われた際、再びエンタープライズの改装案が持ち上がりました。しかし、最終的には新しいオービターであるエンデバーが建造されることになり、エンタープライズは宇宙へ飛び立つ機会を失いました。

退役後の展示と移動

エンタープライズは、試験終了後に国立航空[[宇宙博物館]]別館に展示されました。その間、他のオービターの修理のため、一部の部品が取り外されました。スペースシャトルが全機退役した後、ディスカバリーが同博物館で展示されることになり、エンタープライズはニューヨークのイントレピッド海上航空[[宇宙博物館]]に移されることになりました。

2012年4月24日、エンタープライズはボーイング747の背に乗せられ、ニューヨーク市上空をデモ飛行しました。そして、同年6月にイントレピッド博物館に搬入され、現在もその姿を見ることができます。

スペースシャトル計画における他のオービター

エンタープライズ以外にも、スペースシャトル計画では複数のオービターが活躍しました。以下に主なオービターを紹介します。

コロンビア (Columbia)：1981年4月12日に初飛行。2003年2月1日、大気圏再突入中に空中分解事故により失われました。
チャレンジャー (Challenger)：1983年4月4日に初飛行。1986年1月28日、打ち上げ直後に爆発事故により失われました。
ディスカバリー (Discovery)：1984年8月30日に初飛行。
アトランティス (Atlantis)：1985年10月3日に初飛行。
エンデバー (Endeavour)：1992年5月7日に初飛行。チャレンジャー号の代替機として建造されました。
パスファインダー (Pathfinder)：実物大模型ですが、オービターとして数えられることもあります。

エンタープライズは、その特別な名前と、宇宙へ飛び立つことのなかった経緯から、スペースシャトル計画の中でも特に人々の記憶に残る機体と言えるでしょう。

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