スペースX CRS-16
「スペースX CRS-16」は、国際宇宙ステーション（ISS）へ向けた商業補給サービス（Commercial Resupply Services, CRS）ミッションの一つです。別名「SpX-16」としても知られるこのフライトは、2018年12月5日にスペースXが運用するファルコン9ロケットによって打ち上げられました。
本ミッションは、NASAとの契約に基づきスペースXが実施したもので、特に改良型のロケットであるファルコン9ブロック5が、CRSミッションで初めて使用された点に大きな特徴があります。当初、NASAは2016年2月にスペースXとの契約を延長し、CRS-16からCRS-20までの合計5回の追加補給ミッション実施を決定していました。このCRS-16ミッションは、当初2018年8月の実施が見込まれていましたが、その後の調整によりスケジュールは度々変更され、最終的に2018年12月5日の打ち上げとなりました。
CRS-16ミッションでは、ISSに届けられる合計2,573キログラム（約5,672ポンド）の貨物が搭載されました。この貨物は、宇宙飛行士が船内で使用する物資や科学実験装置を収めた「与圧貨物」と、ISSの船外に取り付けられる実験装置などの「非与圧貨物」に分けられます。
与圧貨物は総計1,598キログラム（約3,523ポンド）で構成され、その内訳は以下の通りです：
科学研究関連: 1,037キログラム（約2,286ポンド）。これには、齧歯類を用いた実験「齧歯類研究8（RR-8）」、筋肉の分子レベルでの変化を調べる「分子筋肉実験（MME）」、中性子回折に適した高品質なタンパク質結晶を生成する「中性子結晶構造解析のための大型完全タンパク質結晶の成長（Perfect Crystals）」などが含まれます。特にRR-8実験のために40匹のマウスが宇宙へと運ばれました。
乗組員補給物資: 304キログラム（約670ポンド）。
宇宙船ハードウェア: 191キログラム（約421ポンド）。
船外活動装備: 15キログラム（約33ポンド）。
コンピューター資材: 40キログラム（約88ポンド）。
ロシア関連ハードウェア: 11キログラム（約24ポンド）。
* キューブサット: 当初別の補給ミッションであるシグナス NG-10で打ち上げられる予定だったものが、スケジュールの都合で本ミッションに変更され搭載されました。具体的には、南インディアナ大学の「UNITEキューブサット」と、NASAエイムズ研究センターの「TechEdSat-8キューブサット」です。
一方、非与圧貨物は975キログラム（約2,150ポンド）を占め、ISSの船外で実施される重要な実験装置が搭載されました。主なものとして、地球上の森林生態系の構造を詳細に観測するためのレーザー装置である「全球的生態系動向調査ライダー（GEDI）」と、将来的な衛星の燃料補給技術確立を目指す実験プロジェクト「ロボット燃料補給ミッション3（RRM3）」の実験機材がありました。GEDIは約500キログラム（約1,100ポンド）と推定されています。
打ち上げ自体は成功裏に行われましたが、ファルコン9ロケットの第1段ブースター（製造番号B1050.1）は、地球への帰還時に予期せぬ事態に直面しました。大気圏再突入の際に、ブースターの姿勢制御を担うグリッドフィンの液圧ポンプに異常が発生し、停止してしまったのです。これにより、第1段は再突入燃焼を終えた後、制御不能なロール状態に陥りました。当初予定されていた地上着陸地点（LZ-1）への正確な帰還は叶いませんでしたが、幸いにもケープ・カナベラル沖の海上に比較的損傷が少ない状態で着水することに成功しました。スペースXのCEOであるイーロン・マスク氏は、着水直後にブースターが無傷であり回収中であると発表しましたが、その後の検査で再飛行には適さないほどの損傷が確認され、最終的には部品取りのためのスクラップとして扱われることになりました。
ISSでのミッション完了後、ドラゴン宇宙船は地球への帰還準備を進めました。2019年1月13日23時33分（協定世界時 UTC）にISSから分離されたドラゴンは、軌道を離脱し、約5時間後の2019年1月14日05時10分（UTC）に太平洋上へ無事着水しました。この帰還カプセルには、ISSでの実験で得られた試料や不要になった機器など、2,500キログラム（約5,500ポンド）を超える貨物が積まれていました。これは、ISSから地球へ物資を持ち帰ることができるドラゴンの重要な能力を示す事例となりました。
このように、スペースX CRS-16ミッションは、ISSへの物資補給という主要な目的を達成するとともに、ファルコン9ブロック5のCRS初投入、様々な科学研究や技術開発のためのペイロード輸送、そして第1段ブースターの回収における挑戦など、複数の側面で注目されるフライトとなりました。
本ミッションは、NASAとの契約に基づきスペースXが実施したもので、特に改良型のロケットであるファルコン9ブロック5が、CRSミッションで初めて使用された点に大きな特徴があります。当初、NASAは2016年2月にスペースXとの契約を延長し、CRS-16からCRS-20までの合計5回の追加補給ミッション実施を決定していました。このCRS-16ミッションは、当初2018年8月の実施が見込まれていましたが、その後の調整によりスケジュールは度々変更され、最終的に2018年12月5日の打ち上げとなりました。
CRS-16ミッションでは、ISSに届けられる合計2,573キログラム（約5,672ポンド）の貨物が搭載されました。この貨物は、宇宙飛行士が船内で使用する物資や科学実験装置を収めた「与圧貨物」と、ISSの船外に取り付けられる実験装置などの「非与圧貨物」に分けられます。
与圧貨物は総計1,598キログラム（約3,523ポンド）で構成され、その内訳は以下の通りです：
科学研究関連: 1,037キログラム（約2,286ポンド）。これには、齧歯類を用いた実験「齧歯類研究8（RR-8）」、筋肉の分子レベルでの変化を調べる「分子筋肉実験（MME）」、中性子回折に適した高品質なタンパク質結晶を生成する「中性子結晶構造解析のための大型完全タンパク質結晶の成長（Perfect Crystals）」などが含まれます。特にRR-8実験のために40匹のマウスが宇宙へと運ばれました。
乗組員補給物資: 304キログラム（約670ポンド）。
宇宙船ハードウェア: 191キログラム（約421ポンド）。
船外活動装備: 15キログラム（約33ポンド）。
コンピューター資材: 40キログラム（約88ポンド）。
ロシア関連ハードウェア: 11キログラム（約24ポンド）。
* キューブサット: 当初別の補給ミッションであるシグナス NG-10で打ち上げられる予定だったものが、スケジュールの都合で本ミッションに変更され搭載されました。具体的には、南インディアナ大学の「UNITEキューブサット」と、NASAエイムズ研究センターの「TechEdSat-8キューブサット」です。
一方、非与圧貨物は975キログラム（約2,150ポンド）を占め、ISSの船外で実施される重要な実験装置が搭載されました。主なものとして、地球上の森林生態系の構造を詳細に観測するためのレーザー装置である「全球的生態系動向調査ライダー（GEDI）」と、将来的な衛星の燃料補給技術確立を目指す実験プロジェクト「ロボット燃料補給ミッション3（RRM3）」の実験機材がありました。GEDIは約500キログラム（約1,100ポンド）と推定されています。
打ち上げ自体は成功裏に行われましたが、ファルコン9ロケットの第1段ブースター（製造番号B1050.1）は、地球への帰還時に予期せぬ事態に直面しました。大気圏再突入の際に、ブースターの姿勢制御を担うグリッドフィンの液圧ポンプに異常が発生し、停止してしまったのです。これにより、第1段は再突入燃焼を終えた後、制御不能なロール状態に陥りました。当初予定されていた地上着陸地点（LZ-1）への正確な帰還は叶いませんでしたが、幸いにもケープ・カナベラル沖の海上に比較的損傷が少ない状態で着水することに成功しました。スペースXのCEOであるイーロン・マスク氏は、着水直後にブースターが無傷であり回収中であると発表しましたが、その後の検査で再飛行には適さないほどの損傷が確認され、最終的には部品取りのためのスクラップとして扱われることになりました。
ISSでのミッション完了後、ドラゴン宇宙船は地球への帰還準備を進めました。2019年1月13日23時33分（協定世界時 UTC）にISSから分離されたドラゴンは、軌道を離脱し、約5時間後の2019年1月14日05時10分（UTC）に太平洋上へ無事着水しました。この帰還カプセルには、ISSでの実験で得られた試料や不要になった機器など、2,500キログラム（約5,500ポンド）を超える貨物が積まれていました。これは、ISSから地球へ物資を持ち帰ることができるドラゴンの重要な能力を示す事例となりました。
このように、スペースX CRS-16ミッションは、ISSへの物資補給という主要な目的を達成するとともに、ファルコン9ブロック5のCRS初投入、様々な科学研究や技術開発のためのペイロード輸送、そして第1段ブースターの回収における挑戦など、複数の側面で注目されるフライトとなりました。
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