スペースX CRS-17

スペースX CRS-17ミッション

スペースX CRS-17は、米国宇宙企業スペースXが、アメリカ航空宇宙局（NASA）との契約に基づいて実施した国際宇宙ステーション（ISS）への重要な商業補給ミッションの一つです。正式名称はSpX-17としても知られています。このミッションは、ISSで活動する宇宙飛行士が必要とする物資や、様々な科学実験のための機器などを地球から軌道上へ輸送することを目的としていました。

ミッションの計画と準備

NASAは、ISSへの定期的な補給を民間企業に委託する商業補給サービス（CRS）プログラムを推進しており、スペースXはその主要なパートナーの一つです。2016年2月、NASAは既に契約していたスペースXとのCRSミッションについて、CRS-16からCRS-20までの5回分の追加契約延長を発表しました。この一環として、CRS-17ミッションの実施が確定しました。

当初、CRS-17ミッションは2018年10月の打ち上げが予定されていました。しかし、その後計画は変更され、2019年1月の時点では2019年4月に延期されることになりました。さらなる遅延が発生し、最終的な打ち上げ日は2019年5月4日となりました。

この延期の背景には、技術的な課題や他のミッションのスケジュール調整があったと考えられますが、特に2019年4月20日に発生したスペースXの有人宇宙船「クルー・ドラゴン2号機」の地上試験での異常事象が影響を与えました。この異常を受けて、CRS-17ミッションで使用されるファルコン9ロケットの第一段を着陸させるためのドローン船「Of Course I Still Love You」の配置場所にも変更が必要となりました。具体的には、地域の安全を確保し、事故原因調査に役立つ可能性のある情報を保全するため、ドローン船は通常の着陸地点からわずか28キロメートル離れた場所に配置されました。

打ち上げと軌道投入

CRS-17ミッションは、2019年5月4日にケープカナベラル空軍基地の複合施設40（SLC-40）から、スペースXの主力ロケットであるファルコン9ロケットに搭載されて打ち上げられました。搭載されたドラゴン補給船は、ISSに向けて順調に飛行を開始しました。

この打ち上げにおいて、一つの注目すべき特異事象が発生しました。通常、打ち上げ時にロケットと機体を繋ぐ発射台のアンビリカルケーブルはきれいに分離される設計になっていますが、CRS-17ではケーブルの一部がドラゴン宇宙船に付着したまま軌道に乗ってしまったのです。このケーブルは、ドラゴン宇宙船がISSに接近し、ドッキングする際に撮影された高解像度の映像や画像の中でもはっきりと視覚的に確認されました。これは非常に珍しいケースであり、ミッションの運用には大きな影響を与えませんでしたが、その後の技術的な評価の対象となりました。

搭載貨物

CRS-17ミッションでISSへ運ばれた貨物は、科学実験機器、宇宙飛行士の生活用品、 stationの運用に必要な予備品など、多岐にわたります。貨物の総重量は2,482キログラムでした。このうち、ISS船内の与圧された区画に格納される与圧貨物は1,517キログラムを占めていました。一方、船外に取り付けられる機器などの非与圧貨物は965キログラムでした。

非与圧貨物の中でも特に注目されたのが、軌道上炭素観測所3（OCO-3）とSTP-H6です。OCO-3は、地球大気中の二酸化炭素の分布を高精度で観測するための新しい観測機器で、気候変動研究に貢献することが期待されました。STP-H6（Space Test Program-Houston 6）は、宇宙環境での様々な技術試験や科学実験を行うためのプラットフォームであり、ISSの船外実験プラットフォームに設置されました。これらの重要な科学機器や技術試験装置をISSへ届けることは、CRS-17ミッションの主要な目的の一つでした。

その後の運用と役割

ドラゴン補給船はISSに無事ドッキングした後、約1ヶ月間にわたりISSに滞在しました。その間、搭載されていた貨物がISSクルーによって運び出され、同時にISSから回収される実験サンプルや不要な機器などがドラゴン内部に搭載されました。回収された貨物は、分析や再利用のために地球へ持ち帰られます。

CRS-17ミッションは、ISSの長期的な維持と科学研究の継続に不可欠な役割を果たしました。物資の補給だけでなく、OCO-3のような新しい観測装置を軌道上に設置することで、地球科学や宇宙科学の進歩にも貢献しました。打ち上げ時の特異事象は発生しましたが、ミッション全体としては成功裏に完了し、ISSへの安定した補給能力を示す結果となりました。

このミッションは、民間の宇宙輸送能力がISS運用に不可欠な存在となっていることを改めて示す事例であり、今後の宇宙開発における民間企業の役割の重要性を強調するものです。

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