ドラゴン2

スペースX ドラゴン2：次世代有人宇宙船

ドラゴン2は、アメリカの民間宇宙企業スペースXが開発した最新の有人宇宙船です。旧型のドラゴン宇宙補給機の後継機として開発され、2020年5月には初の有人宇宙飛行を成功させました。アメリカの宇宙船としては、2011年のスペースシャトルの退役後、初の有人飛行となる画期的な宇宙船です。

概要

ドラゴン2は、旧型ドラゴンから大幅に改良されており、フライトコンピューターやアビオニクスが刷新されています。機体形状も変更され、大きな窓が設置されたほか、太陽電池アレイも再設計されました。ドラゴン2には、有人飛行に対応した「クルードラゴン」と、旧型ドラゴンを置き換える無人貨物輸送用の「カーゴドラゴン」の2種類があります。

クルードラゴンには、独自の打ち上げ脱出システムが搭載されています。これは、宇宙船の四隅に設置された8基のエンジンを逆噴射することで、緊急時に宇宙船を安全に切り離すシステムです。クルードラゴンとカーゴドラゴンは、商業補給サービス (CRS2) および商業乗員輸送開発 (CCDev) 計画の下、国際宇宙ステーション (ISS) への物資や人員の輸送に用いられる予定です。また、クルードラゴンは低軌道を超え、月への宇宙旅行にも利用されることが想定されています。

クルードラゴンの開発は2010年に「ドラゴンライダー」として始まりました。これは、NASAがISSへの人員輸送を民間企業に委託するCCDev計画に応じたものです。2014年5月にはクルードラゴンの設計が公開され、同年10月にはボーイングのCST-100とともに、同計画の機体として選定されました。NASAは、クルードラゴンを低コストな選択肢とみなし、CST-100に42億ドルの資金を提供したのに対し、クルードラゴンには26億ドルを提供しました。2019年3月にはISSへの無人試験飛行を成功させ、2020年5月にはCCDev計画初となる有人での飛行試験も達成しました。カーゴドラゴンもまた、2016年1月にNASAのCRS2計画に選定され、2020年12月より旧型ドラゴンに代わってISSへの物資輸送を行っています。

設計

ドラゴン2には、「クルードラゴン」と「カーゴドラゴン」の2つのバージョンが存在します。クルードラゴンは、最大7人の乗員または乗員と貨物を輸送できるように設計されています。完全に自動化されたランデブーおよびドッキング機能（手動操作も可能）を備え、NASAドッキング機構 (NDS) を使用してISSと接続します。典型的なミッションでは、ドラゴンライダーはISSに180日間ドッキングしますが、宇宙船自体は210日間の滞在能力を持ちます。

スペースXは当初、ドラゴン2において従来のパラシュートによる海上着水に加えて、ロケットエンジンの逆噴射による着陸も計画していました。しかし、後に安全上の理由から逆噴射着陸の開発は中止され、全ての帰還でパラシュートが使用されることになりました。

ドラゴン2の価格について、2015年のNASAの資料では、スペースXのドラゴン2宇宙船の打ち上げ費用は5800万USドル/人とされており、RKKエネルギアのソユーズ宇宙船の7600万USドル/人と比較して、低価格で経済的であると評価されています。

2024年7月には、2030年以降に予定されているISSの運用終了・廃棄のため、ISSを牽引し大気圏内に突入させるための宇宙船（USDV）を、ドラゴン2をベースにNASAとスペースXで共同開発する方針が明らかにされました。

技術仕様

ドラゴン2は、以下のような特徴を持っています。

再使用性: 複数回の再使用が可能であり、宇宙へのアクセス費用を大幅に削減できます。
積載量: カーゴドラゴン: 3,307 kg、クルードラゴン: 7名。
帰還: 4つのメインパラシュートによる洋上着水。
エンジン（クルードラゴンのみ）: 側面に8基のスーパー・ドラコエンジンを搭載。打ち上げ脱出システムに使用。
ドッキング: 国際宇宙ステーションへの自動ドッキング能力。
操作: 従来の物理スイッチに代わり、タブレット風コンピュータを備えます。

打ち上げ記録

（クルードラゴン、カーゴドラゴンのフライト記録は省略）

ドラゴン2は、革新的な技術と設計思想が盛り込まれた、次世代の有人宇宙船として、今後の宇宙開発に大きな影響を与えることが期待されています。

もう一度検索