スポーティン・ライフ

『スポーティン・ライフ』

『スポーティン・ライフ』（Sportin' Life）は、米国出身のエレクトリック・ジャズ・バンド、ウェザー・リポートが1985年に発表した通算13作目のスタジオ録音盤です。彼らの長い活動歴の中でも、この作品はいくつかの点で異彩を放っています。

このアルバムで最も注目すべき点は、ウェザー・リポートの過去の作品と比べて、歌唱が大きくフィーチャーされていることです。これまで主にインストゥルメンタル作品を発表してきた彼らが、人間の声をサウンドの重要な要素として採用したのは、バンドにとって新たな試みでした。ただし、ここで使用されているボーカルの大部分は、物語を伝えるような明確な歌詞を持つものではなく、むしろ楽器の一部として、あるいはリズムやメロディーを構成する要素として用いられています。スキャットやボイスパフォーマンスに近い形で、声がサウンドのテクスチャーを豊かにしています。

特に、繰り返し耳にされる特徴的なボーカルフレーズの多くは、世界的なボーカリストであるボビー・マクファーリンと、実力派シンガーのカール・アンダーソンによって歌われています。彼らの参加は、アルバムの音楽性に多様な色合いをもたらし、作品の個性を決定づける要因の一つとなっています。具体的には、ボビー・マクファーリンは収録曲のうち1曲目、3曲目、5曲目、8曲目に、カール・アンダーソンは1曲目、3曲目、8曲目に参加しています。さらに、ディー・ディー・ベルソンやアルフィー・サイラスといったシンガーも、これらの楽曲（1曲目、3曲目、8曲目）にクレジットされています。

アルバムのタイトルである「スポーティン・ライフ」は、文学作品に由来するものです。これは、作曲家ジョージ・ガーシュウィンと作家デュボーズ・ヘイワードが共同で制作した著名なオペラ『ポーギーとベス』（Porgy and Bess）に登場する、同名の登場人物から名付けられています。このキャラクターは、オペラ中で特定の性格を持つ人物として描かれており、アルバムの音楽性やテーマと何らかの関連を示唆しているのかもしれませんが、詳細な意図については言及されていません。

本作の制作に参加した主要メンバーは以下の通りです。

ジョー・ザヴィヌル (Joe Zawinul): バンドの中心人物であり、シンセサイザーやピアノといったキーボード楽器全般を担当しています。
ウェイン・ショーター (Wayne Shorter): もう一人の共同リーダーで、テナー・サクソフォーンやソプラノ・サクソフォーンで印象的な演奏を聴かせます。
オマー・ハキム (Omar Hakim): ダイナミックで正確なドラミングでリズムを構築し、本作ではバックボーカルも担当しています。
ヴィクター・ベイリー (Victor Bailey): グルーヴィーで力強いベースラインを提供し、オマー・ハキムと同様にバックボーカルとしても参加しています。
* ミノ・シネル (Mino Cinelu): 多彩なパーカッション楽器でサウンドに深みを与え、インプット情報によれば「コンフィアンス」という曲ではリードボーカルとギターも務めています。

これらのレギュラーメンバーに加え、前述のゲストボーカリストたちが、このアルバム独自のサウンドを形作る上で重要な役割を果たしました。

『スポーティン・ライフ』は、ウェザー・リポートがキャリア後期の1980年代半ばに発表した作品として、彼らのサウンドがどのように進化していったかを示す例と言えます。ジャズ、ロック、ファンク、ワールドミュージックなど、多様な要素を融合させてきた彼らが、人間の声というプリミティブな要素を大胆に取り入れたことで、新たな表現の可能性を切り開いた作品として、ファンや評論家の間で語られています。このアルバムは、ウェザー・リポートの実験精神を示す作品の一つとして、今なお聴き継がれています。

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