スマトラサイ

スマトラサイ（Dicerorhinus sumatrensis）

スマトラサイは、哺乳綱奇蹄目サイ科に属するサイの一種で、現生するサイの中では最小の種です。他のサイと異なり、全身が粗く長い体毛で覆われているのが特徴です。スマトラサイ属には、この種のみが含まれています。

分布

スマトラサイは、主にインドネシアのスマトラ島に生息しています。かつてはインド、カンボジア、タイ、バングラデシュなどにも分布していましたが、現在はこれらの地域では絶滅しています。ミャンマー北部にも生息している可能性が指摘されています。

形態

スマトラサイは、体長236～318cm、尾長65cm、肩高108～150cm、体重800～1000kgです。皮膚の厚さは約1.6cmと、サイの中では薄い方です。全身は粗く長い体毛で覆われ、体色は暗灰褐色です。

2本の角を持ち、最大で38.1cmに達します。一般的に、オスの角はメスよりも大きく、平均的なオスでは25cm、メスでは10cm程度です。生まれたばかりの幼獣は、体長約90cm、体重25kg、角の長さ2cmほどです。

分類

スマトラサイには、以下の3つの亜種が確認されています。

スマトラサイ（Dicerorhinus sumatrensis sumatrensis）: スマトラ島に生息。タイやマレーシアでは絶滅。
ボルネオサイ（Dicerorhinus sumatrensis harrissoni）: ボルネオ島に生息。マレーシアでは野生絶滅。
* キタスマトラサイ（Dicerorhinus sumatrensis lasiotis）: ミャンマー北部に生息？インド、バングラデシュ、ブータンでは絶滅。

生態

スマトラサイは、熱帯雨林や湿潤林に生息し、特に河川や沼の周辺を好みます。かつてはジャワサイと生息域を分けていましたが、生息地の減少により、様々な標高で見られるようになりました。昼間は水浴びや泥浴びを行い、夜間に採食します。単独、ペア、または幼獣を含む家族群で生活します。

行動圏はオスで30平方キロメートル、メスで10平方キロメートルほどです。斜面や崖を素早く登る能力があり、泳ぎも得意で海を泳いだ例もあります。食性は草食性で、樹皮、木の枝、葉、果実、タケノコなどを食べます。

繁殖は胎生で、妊娠期間は約8ヶ月と言われていますが、疑問視されています。出産頻度は3～4年に1回で、1頭の幼獣を産みます。授乳期間は16～17ヶ月で、生後7～8年で性成熟します。

人間との関係

スマトラサイは、角が工芸品として利用されたり、薬効があると信じられているため、密猟の対象となってきました。また、森林伐採やプランテーション開発による生息地の破壊、違法な木材採取や漁業による攪乱も、個体数減少の大きな要因です。

1975年のワシントン条約発効時より、附属書Iに掲載され、国際的な保護の対象となっています。1989年には536～962頭、1993年には356～495頭、1995年には約300頭と推定されています。現在、野生での個体数はさらに減少していると見られています。

日本では、2020年時点で特定動物に指定され、愛玩目的での飼育は禁止されています。シンシナティ動物園やSumatran Rhino Sanctuaryなど、一部の施設で飼育下繁殖の成功例があります。

その他

スマトラサイは、その独特な姿と希少性から、多くの人々の関心を集めています。絶滅の危機に瀕している現状を改善するため、国際的な協力体制が不可欠となっています。

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