スマートダスト

スマートダスト

スマートダスト（Smartdust）とは、微小なセンサー、無線通信機、発電素子などを搭載したマイクロマシンを大量に分散させ、互いに連携して機能的なネットワークを構築する概念です。主にファームウェアにTinyOSを使用するセンサーネットワークを指します。

概要

スマートダストは、現在のモノのインターネット（IoT）やユビキタスコンピューティングの先駆けとも言える概念です。1992年にランド研究所で考案され、1990年代半ばにはアメリカ国防高等研究計画局（DARPA）のISAT計画の一環として研究が進められました。1996年にアメリカ真空学会、1999年にはMobiComで発表されています。

個々のセンサーは「モート（mote）」と呼ばれ、無線通信機能と複数のセンサーを備えています。多数のモートが互いに接近すると、自動的に連携してネットワークを構成します。発表当初は、センサーネットワークの究極の姿として期待されていましたが、考案から20年以上が経過した現在でも、完全な実現には至っていません。

課題

スマートダストが普及しなかった背景には、いくつかの課題があります。

センサーのデータサイズと無線ネットワーク容量の制約: 当時の技術では、センサーで取得できるデータサイズや無線ネットワークの容量が限られており、実用的な用途を見出すことが困難でした。
エネルギー問題: 小型化すると、充電池に蓄積できるエネルギー量はサイズの3乗に比例して減少します。一方、太陽電池などの発電素子の発電量は面積に比例して減少するため、小型化によってエネルギーの確保が難しくなります（二乗三乗の法則）。
メンテナンスコスト: 大量の微小なセンサーを維持・管理するためのコストが高額になる可能性があります。

関連技術

スマートダストは、以下の技術と関連があります。

ナノテクノロジー
自己増殖機械
分子アセンブラ
プログラマブルマター
モバイルアドホックネットワーク
メッシュネットワーク

参考文献

戸辺義人、蔵田英之「細粒度気象センサネットワーク構築の実際-群馬県館林市の例-」『情報処理』第51巻第6号、情報処理学会、2010年6月、692-699頁
Eric A.Brewer, 翻訳:安藤進「すべてがサーチ可能になるとき / When Everything Is Searchable」『情報処理』第42巻第12号、情報処理学会、2001年12月、1231-1233頁
亀岡慎一, 礒田修平, 橋本篤, 伊藤良栄, 宮本哲, 和田弦己, 渡辺直樹, 亀岡孝治「圃場における生育環境情報取得のための無線センサネットワーク構築」『農業情報研究』第26巻第1号、農業情報学会、2017年、11-25頁
* 倉田成人「都市のスマートセンシング」『計測と制御』第52巻第11号、計測自動制御学会、2013年、943-945頁

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