メッシュネットワーク

メッシュネットワークとは

メッシュネットワークは、ネットワークを構成する各ノードが、互いに直接または間接的に接続されたネットワーク形態です。このネットワークでは、データや音声のルーティングが柔軟に行われ、ノード間の経路が複数存在することで、一部の経路が途絶えても他の経路を通じて通信を継続できるという特徴があります。特に、全てのノードが相互に接続されているものを完全接続ネットワークと呼びます。

メッシュネットワークの基本構造

メッシュネットワークの最も重要な特徴は、各ノードが「ホップ」と呼ばれる動作を通じてトラフィックを転送する点です。これにより、ネットワーク上の任意のノードから他のノードへと接続が可能になります。通常、これらのノードは移動しないことが前提ですが、メッシュネットワークはアドホックネットワークの一種と見なすこともできます。モバイルアドホックネットワーク（MANET）は、ノードの移動を考慮したより複雑なネットワーク形態です。

自己修復能力

メッシュネットワークは、その構造的な特徴から自己修復能力を備えています。ノードのダウンや接続不良が発生しても、ネットワーク全体としては運用を継続できます。このため、非常に信頼性の高いネットワークを構築することができ、IEEE 802.1aqのような標準規格にも適用されています。この概念は、無線ネットワークだけでなく、有線ネットワークやソフトウェアの相互作用にも応用可能です。

無線メッシュネットワーク

無線メッシュネットワークは、メッシュネットワークの典型的な応用例です。当初は軍事用に開発されましたが、20世紀末以降に無線技術が進化し、低コストで利用できるようになりました。現在の無線メッシュネットワークでは、各ノードが複数の無線通信をサポートし、クライアントアクセス、双方向サービス、移動体への高速転送などの機能を提供しています。また、ノード設計もモジュール化が進み、異なる周波数帯で通信できる複数の無線カードをサポートできるようになりました。

無線メッシュネットワークの応用事例

Merakiの小型無線メッシュルーター: 2007年初めに発売されたMerakiのルーターは、無線メッシュネットワークの一例です。長距離通信に最適化されており、広範囲をカバーできます。
アメリカ海軍大学院の実験: 国境警備のために、航空カメラからの高解像度ビデオ信号をメッシュネットワークを通じて地上に伝送する実証実験が行われました。
MITメディアラボのプロジェクト: 開発途上国向けのOLPC（XO-1ノートパソコン）で、IEEE 802.11s規格に基づいたメッシュネットワーク技術が採用されています。これにより、高価なインフラがなくてもノートパソコン間で接続を共有できます。
Strawberry Fairでの利用: イギリスのケンブリッジで開催されたイベントで、メッシュネットワークを使ってテレビ、ラジオ、インターネットの生中継が行われ、多くの人が利用しました。
CUWiNプロジェクト: オープンソースのソフトウェアに基づいたメッシュネットワークが開発されており、Hazy-Sighted Link State Routing ProtocolとExpected Transmission Countという技術が使われています。
SMesh: ジョンズ・ホプキンス大学が開発したマルチホップ無線メッシュネットワークで、高速ハンドオーバー方式により、移動中のクライアントでも接続が途切れません。
TinyOS: カリフォルニア大学バークレー校が中心となって開発されたオープンソースのOSで、多種類の無線センサーネットワークハードウェアをサポートしており、産業用途での実績も多くあります。
FiretideとWave Relay: これらの技術は、ノード間通信に5.2GHzまたは5.8GHz帯を使用し、クライアントとノード間の通信には2.4GHz帯を使用します。ソフトウェア無線技術を活用しています。
SolarMESHプロジェクト: 太陽電池と再充電可能な電池を電源とするノードを使用したメッシュネットワークです。省電力化技術も研究されており、単一無線ノードへの応用が期待されています。

近年の通信規格におけるメッシュネットワーク

最近の無線通信規格にもメッシュネットワークの概念が取り入れられています。例えば、ITU-TのG.hnは、既存の屋内配線（電力線、電話線、同軸ケーブル）を使った高速LAN規格です。ノイズの多い環境でも、ノードを中継器として機能させることで通信を安定させることができます。

関連技術と応用

メッシュネットワークは、ゲーム理論を用いたリソース割り当てやパケットルーティング戦略の分析にも活用されています。また、以下の関連技術とも密接な関係があります。

Open Shortest Path First (OSPF): ネットワーク内の最適な経路を選択するためのルーティングプロトコル。
Peer to Peer (P2P): ネットワーク上のコンピュータ間で直接ファイルを共有する技術。
モバイルアドホックネットワーク (MANET): 移動するノードで構成される自律分散型の無線ネットワーク。
遅延耐性ネットワーク: 通信が途絶えやすい環境でもデータ伝送を可能にするネットワーク。
無線センサネットワーク: 環境モニタリングなどで使用される、多数の無線センサーノードから構成されるネットワーク。
ファイア・チャット: インターネット接続がない環境でも利用できるメッセージングアプリケーション。
ネットワーク・トポロジー: ネットワークの構成を指す概念で、メッシュネットワークもその一つ。
* メッシュWi-Fi: 家庭用ルーターなどで採用される、複数台のアクセスポイントで広範囲をカバーする無線ネットワーク。

まとめ

メッシュネットワークは、信頼性が高く、柔軟なネットワーク構築が可能な技術です。無線メッシュネットワークを中心に、様々な分野でその応用が広がっており、今後の発展が期待されます。自己修復能力や分散型のアーキテクチャは、より堅牢な通信基盤を構築するための重要な要素となっています。

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