スマート1

スマート1（SMART-1）

スマート1（SMART-1）は、欧州宇宙機関（ESA）が2003年9月27日に打ち上げた月探査用の技術試験衛星です。このプロジェクトの主な目的は、イオンエンジンを用いた推進システムの性能を評価し、月軌道への効果的な移動を実験することでした。また、二次的な目的として、月の探査活動も行われました。

打ち上げと軌道移動の経過

スマート1は、アリアン5ロケットに搭載されて、フランスのギアナ宇宙センターから打ち上げられました。打ち上げ後、静止トランスファ軌道（7,035 × 42,223 km）に投入され、その後、搭載したイオンエンジンを使用して、12ヶ月以上にわたり徐々に軌道を上昇させました。

2004年10月26日には、最終的に地球周回軌道（179,718 × 305,214 km）に到達し、続いて2004年11月16日に月周回軌道に投入されました。この間、イオンエンジンは非常に効率よく機能し、月に向かうための貴重なデータを収集しました。

ミッションの最後は2006年9月3日に訪れました。スマート1は、速度2 km/sで月面に衝突し、ミッションを終了しました。この衝突によって、直径約10メートルのクレーターが形成されたと考えられています。

技術仕様

スマート1の運用における主な技術仕様は以下の通りです：

• - 重量: 367 kg
• - サイズ: 1 m × 1 m × 1 m
• - 推進系: キセノンを使用するPPS-1350型イオンエンジンを1基搭載し、推力は68 mNに達します。キセノンは82kg積まれていました。
• - 観測機器: スマート1には、X線スペクトロメータ、高精度の月小型カメラ、および小型赤外線スペクトロメータが搭載されており、これらの機器を用いて月の性質と環境についての詳細なデータを収集しました。

ミッションの意義

スマート1は、従来の化学推進に比べてはるかに効率的な推進手段としてのイオンエンジンの可能性を示す重要なミッションでした。月周回軌道におけるこれらの実験は、将来の月探査や他の惑星探査ミッションにおいても大いに役立つ知見をもたらしました。特に、月への低コストかつ持続的なアクセスを可能にするための基盤を築いたといえるでしょう。さらに、収集されたデータは、月の環境や資源に関する理解を深めるための貴重な資料となりました。

このように、スマート1は単なる技術試験としての枠を超え、月探査の新たな道を切り開いたプロジェクトであったと言えます。

もう一度検索