スムガイト

スムガイト：アゼルバイジャンの工業都市、その光と影

スムガイト（Sumqayıt）は、アゼルバイジャン共和国に位置する都市であり、SumgaitやSumqayytとも表記されます。首都バクーの北西約30キロメートル、カスピ海に面した場所に位置しています。

歴史：工業都市としての誕生と環境問題

スムガイトの地には1580年頃から定住が始まったとされていますが、本格的な発展は20世紀に入り、ソビエト連邦の支配下となってからです。1935年、ソ連政府はアブシェロン半島に重工業を集中させることを決定し、バクーへの近さと鉄道の便からスムガイトが選ばれました。まず、バクーの石油産業への電力供給を目的とした火力発電所が建設され、第二次世界大戦後には金属工学や化学工業の工場が次々と建設されました。それに伴い住宅建設も進み、1949年には市に昇格しました。

しかし、急速な工業化は深刻な環境汚染をもたらしました。アゼルバイジャンが独立した後、スムガイトは国内で最も環境破壊が進んだ地域の一つとなり、重工業も衰退しました。2007年には、アメリカの雑誌「タイム」で「世界で最も汚染された都市」の一つとして挙げられています。

地理：カスピ海に面した立地

スムガイトは、北から時計回りにカスピ海、バクー、アブシェロン県、フズィ県と接しています。カスピ海に面しているため、水運の便が良いことが特徴です。

交通：かつては路面電車も

スムガイト市内には、1959年に開通した路面電車（スムガイト市電）がありましたが、2003年までに廃止されました。

スムガイト暴動：民族対立の傷跡

1988年2月29日、スムガイトでアゼリー人住民によるアルメニア人住民に対する襲撃事件が発生しました。警察が傍観する中、暴動はエスカレートし、双方に死者が出る事態となりました。3日間の暴動で、2,000人が負傷し、32人が死亡（アルメニア人26人、アゼリー人6人）しました。この事件をきっかけに、スムガイトから全てのアルメニア人が脱出しました。

スムガイト暴動は、アルメニア人とアゼリー人の対立を激化させ、ナゴルノ・カラバフ戦争へと繋がりました。ナゴルノ・カラバフ戦争によってナゴルノ・カラバフ自治州から避難してきた多くのアゼリー人が、スムガイトに移住しました。

姉妹都市：国際交流

スムガイトは、以下の都市と姉妹都市提携を結んでいます。

ルートヴィヒスハーフェン（ドイツ）
バーリ（イタリア）
チェルカースィ（ウクライナ）
株洲市（中国）
ジェイハン（トルコ）
ルスタヴィ（ジョージア）
マヒリョウ（ベラルーシ）
ネヴィンノムイスク（ロシア）
リンツ（オーストリア）
ピテシュティ（ルーマニア）
アクタウ（カザフスタン）
ジェノヴァ（イタリア）

スムガイト出身の人物

* ファイグ・アフメッド：絨毯芸術家

スムガイトは、ソ連時代の工業化の遺産と、民族紛争の傷跡を抱える都市です。近年は環境問題の改善や経済の再建に取り組んでおり、今後の発展が期待されています。

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