スラップ・ハッピー

スラップ・ハッピーは、1970年代にドイツで結成されたアヴァンギャルド・ポップバンドです。その音楽性は、クラウトロックの実験精神とポップミュージックの親しみやすさを融合させた、他に類を見ないものでした。

結成と初期の活動

アメリカ生まれでイギリス育ちのピーター・ブレグヴァドは、ロンドンでアンソニー・ムーアと出会い、音楽活動を始めました。その後、彼らは西ドイツに移住し、ハンブルクでインガ・ランフらが結成したバンドに、ダグマー・クラウゼがボーカルとして参加していました。1972年、この3人を中心に、スラップ・ハッピーが結成されました。

同年、クラウトロックの代表的なグループであるファウストの協力を得て、ファースト・アルバム『ソート・オヴ』をポリドール・レコードから発表しました。しかし、このアルバムは商業的な成功を収めることができませんでした。同じくファウストをバックに録音されたセカンド・アルバムは、レコード会社の判断によって発売中止となってしまいます（このアルバムは後に『スラップハッピィ・オア・スラップハッピィ（アクナルバサック・ヌーン）』として1980年に発売されました）。

イギリスでの活動とヘンリー・カウとの共演

1974年、スラップ・ハッピーはセッション・ミュージシャンの協力を得て、セカンド・アルバム『カサブランカ・ムーン』を録音し直し、ヴァージン・レコードから発表しました。

1975年には、イングランドのアヴァンギャルド・グループ、ヘンリー・カウが演奏とプロデュースの両面で参加したサード・アルバム『悲しみのヨーロッパ』を発表しました。さらに、同年発表されたヘンリー・カウ名義のアルバム『傾向賛美』には、スラップ・ハッピーのメンバー全員が参加するという、密接なコラボレーションが行われました。しかしその後、ピーター・ブレグヴァドとアンソニー・ムーアが脱退したことで、バンドは自然消滅してしまいます。ダグマー・クラウゼは、その後しばらくヘンリー・カウと行動を共にしました。

再結成と来日公演

スラップ・ハッピーは、その後3度にわたって短期間の再結成を果たし、1998年には23年ぶりの新作アルバムを発表しました。2000年には、初の来日公演も行っています。

2016年には、16年ぶりに再集結し、活動を再開しました。親交のあるバンド、ファウストとのジョイント・ライブも実施しています。翌2017年には、17年ぶりとなる来日公演を開催しました。

メンバー

ダグマー・クラウゼ (Dagmar Krause) – ボーカル、ピアノ、他
アンソニー・ムーア (Anthony Moore) – キーボード、ギター、他
ピーター・ブレグヴァド (Peter Blegvad) – ギター、ベース、他

ディスコグラフィ

『ソート・オヴ』 - Sort Of (1972年)
『カサブランカ・ムーン』 - Casablanca Moon (1974年)
『悲しみのヨーロッパ』 - Desperate Straights (1975年) ※ヘンリー・カウとの共作。スラップ・ハッピー／ヘンリー・カウ名義。
『傾向賛美』 - In Praise of Learning (1975年) ※ヘンリー・カウとの共作。ヘンリー・カウ名義。
『スラップハッピィ・オア・スラップハッピィ（アクナルバサック・ヌーン）』 - Acnalbasac Noom (1980年)
『サ・ヴァ』 - Ça Va (1998年)
『キャメラ』 - Camera (2000年) ※原版はダグマー・クラウゼ、アンソニー・ムーア、ピーター・ブレグヴァド名義
* 『Live in Japan - May, 2000』 - Live in Japan (2001年)

スラップ・ハッピーは、そのユニークな音楽性と、度重なる活動休止と再開によって、音楽ファンに長く愛され続けているバンドです。

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