スリングスビー T67 ファイアフライ

スリングスビーT67 ファイアフライ：軍民両用練習機の栄光と挫折

スリングスビーT67 ファイアフライは、イギリスのスリングスビー・アビエーション社が製造した、軍民両用で使用可能な練習機です。その高い操縦性能から曲技飛行にも適しており、世界各国で運用されました。しかし、アメリカ空軍での運用においては、重大な事故を繰り返し、その歴史に影を落とすことになります。

開発と製造

T67 ファイアフライのルーツは、フランスのアビオン・フルニエ社が開発したスポーツ機RF-6Bにあります。スリングスビー社は1981年、RF-6Bの製造権を取得し、T67として販売を開始しました。機体は、パイロット2名が並んで座るサイドバイサイド複座型で、主脚は固定式というシンプルな構造です。初期型のT67Aは木製構造でしたが、後継のT67Bからは軽量かつ高強度の複合材が採用され、性能向上に繋がりました。

軍用型とアメリカ空軍での運用

より強力なエンジンを搭載した軍用型T67Mは、イギリス軍を始め、多くの国で初等練習機として採用されました。アメリカ空軍も、1992年に既存のT-41の後継機としてT-3 ファイアフライの名称で113機を導入しました。主に飛行適性選抜（EPS）プログラムで使用される予定でした。

しかし、導入後間もない1995年2月、スピンからの回復訓練中にT-3が墜落し、乗員2名が死亡するという痛ましい事故が発生します。その後も、1996年と1997年にスピンに起因する事故が相次ぎ発生し、大きな問題となりました。

事故の原因は、T67の失速特性とスピンからの回復操作の特殊性にあるとされています。T67は、通常の軽飛行機とは異なる失速特性を持ち、スピンからの回復操作も独特なものでした。アメリカ空軍は、この特殊性を十分に理解せず、既存のT-41と同様の運用方法を採ってしまったことが、事故多発の大きな原因でした。さらに、事故発生前にスリングスビー社がアメリカ空軍に対し、スピンに関する事故情報を正確に報告していなかったことも問題視されています。

1999年、アメリカ空軍はT-3の運用を永久的に停止し、2006年までに全機が解体されました。その後、アメリカ空軍は民間に適性検査を委託するようになり、空軍士官学校ではT-41と同様の機種を転用することになりました。

生産とその後

T67は2000年末までに267機が生産されましたが、1997年に主生産は終了し、その後は少数の在庫販売のみが続けられました。製造元のスリングスビー社自身も、2010年にはマーシャル・エアロスペース社に買収されています。

採用国

T67 ファイアフライは、イギリス、カナダ、バーレーン、ベリーズ、ヨルダン、オランダなど、世界各国で軍用機として採用されました。カナダ空軍ではCT-111 ファイアフライの名称で運用され、イギリスでは統合初等飛行訓練学校(JEFTS)で使用されましたが、いずれも現在は退役しています。

スペック(T-3)

まとめ

スリングスビーT67 ファイアフライは、優れた性能を持つ練習機として世界中で運用されましたが、アメリカ空軍での事故によりその歴史に暗い影を落としました。この事例は、航空機の運用における安全管理の重要性と、異なる特性を持つ機体への適切な対応の必要性を改めて示すものです。

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